汗臭さといえば男性につきもの、女性はあまり汗をかかないと安心していたアナタ、実は、女性も男性とおなじように「汗っかき」であることが最新研究で明らかになった。
ええ~、ショック!とガッカリする前に最後まで読んで。「汗っかき」も捨てたものではないことがわかるから。
「汗っかき」は男女の差ではなく体重の差だった
この研究を発表したのは、豪ウロンゴン大学のシーン・ノートリー教授(スポーツ医学、生理学)らの研究チームだ。生理学専門誌「Experimental Physiology」(電子版)の2017年2月23日号に発表した。
同誌の論文要旨によると、人間の体は熱くなると体温調節のために2つの方法で体を冷却する。1つは、汗をかいて水分を蒸発させ、体内の熱を放散する方法。もう1つは皮膚表面の血流を活発にさせ、皮膚から熱を空中に放散する方法だ。これまでは、男性と女性では体を冷やす生理機能が異なり、女性は血流の循環を盛んにする方法が中心であまり汗をかかないのに対し、男性は盛んに汗をかいて熱を放散する方法をとると思われていた。これは、一般に男性の方が体は大きく、表面積が広いため、汗をかく方法の方が効率はいい。一方、女性は体が小さいため血流を盛んにする方が効率がよい。
ノートリー教授らは、本当に体温を下げる生理機能に男女差があり、男性の方が汗っかきかどうかを調べるため、男性36人と女性24人の皮膚の血流と発汗反応を実験した。摂氏28度、湿度36%の室内で最初は軽い運動、次に中程度の運動と、何度も運動を繰り返してもらい、体温、発汗量、放出エネルギー量などを詳しく調べた。
すると、体温の変化や発汗量、エネルギー消費量などに男女差はないことがわかった。体の小さな男性は小柄な女性と同様に発汗に頼らず、血流の循環で体温を下げていた。大柄な女性は、体の大きい男性と同様、汗をたくさんかいて体を冷やしていた。男女とも体重が重くなるほど「汗っかき」だった。同じ体重の男女がかく汗の量もほぼ同じだった。
女性に怖いのは「汗臭さ」ではなく「疲労臭」
ノートリー教授は論文要旨の中でこう語っている。
「これまでは、体温調節の仕組みに男女差があると思われてきましたが、性別は関係ありませんでした。体重が関係あるのです。体重が1キロ増えるごとに体の表面積が増え、汗腺の量も増えますから発汗量が増えていきます。体重が重い人ほど、汗に頼り、汗っかきになるのです」
「ひえ~、女もそんなに汗をかくの!」とショックを受けたアナタ。実は、汗自体は無臭だから、それほど心配する必要はない。汗臭さの元は皮膚の常在菌が原因で、肌を清潔に保てば大丈夫なのだ。
むしろ、女性の体臭で最近、増えているのが「疲労臭」だ。口に遠慮のない母親から「あなた、仕事が忙しいみたいね。中年男と同じ臭いがするわよ」などと言われ、ドキリとした経験はないだろうか。「日経ウーマン」(オンライン版)2012年の9月6日付の「今どき働き女子に広がる『疲労臭』」の中で、体臭の専門医で「五味クリニック」の五味常明院長はこう解説している(要約抜粋)。
「疲労臭とは、その名の通り、体に疲労が溜まったときに出るにおいのこと。一般的な体臭は、汗や皮脂などの分泌物を皮膚にいる細菌が分解することで作り出されます。一方、疲労臭は体の中から直接においの元が出てくるのが特徴。それは、ズバリ、アンモニア。ツンとしたにおいがします」
「アンモニアは、体の中でタンパク質が分解され日常的に作られています。毒性が強いため、肝臓で無毒な尿素に作り変えられた後、尿として排泄されます。しかし、残業によるストレスや疲労、飲酒などで肝臓が酷使されていると、分解できず、体の中にたまります」
このイヤなにおいを消すにはどうしたらよいだろうか。五味院長はここで「汗」の効用をこう語るのだ。
「最近の女性は上手に汗をかけないことが多く、それも、疲労臭の発生に拍車をかけています。冷房や冷たい飲み物などの多飲により、汗をかく機会が減ると、汗腺の機能が低下します。そうなると、本来、汗を作る際に汗腺から血液中に戻されていたアンモニアがそのまま汗の中に混じるようになり、『ベタベタ汗』になるのです」
規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠をとり、ストレスをためないこと。酒の飲み過ぎを控えて、納豆や乳製品、野菜など食物繊維や乳酸菌の豊富な食事をとり、腸内細菌の環境を整える。そして、適度な運動を心がけ、「いい汗」をいっぱいかく習慣こそが大事だという。