女性に怖いのは「汗臭さ」ではなく「疲労臭」
ノートリー教授は論文要旨の中でこう語っている。
「これまでは、体温調節の仕組みに男女差があると思われてきましたが、性別は関係ありませんでした。体重が関係あるのです。体重が1キロ増えるごとに体の表面積が増え、汗腺の量も増えますから発汗量が増えていきます。体重が重い人ほど、汗に頼り、汗っかきになるのです」
「ひえ~、女もそんなに汗をかくの!」とショックを受けたアナタ。実は、汗自体は無臭だから、それほど心配する必要はない。汗臭さの元は皮膚の常在菌が原因で、肌を清潔に保てば大丈夫なのだ。
むしろ、女性の体臭で最近、増えているのが「疲労臭」だ。口に遠慮のない母親から「あなた、仕事が忙しいみたいね。中年男と同じ臭いがするわよ」などと言われ、ドキリとした経験はないだろうか。「日経ウーマン」(オンライン版)2012年の9月6日付の「今どき働き女子に広がる『疲労臭』」の中で、体臭の専門医で「五味クリニック」の五味常明院長はこう解説している(要約抜粋)。
「疲労臭とは、その名の通り、体に疲労が溜まったときに出るにおいのこと。一般的な体臭は、汗や皮脂などの分泌物を皮膚にいる細菌が分解することで作り出されます。一方、疲労臭は体の中から直接においの元が出てくるのが特徴。それは、ズバリ、アンモニア。ツンとしたにおいがします」
「アンモニアは、体の中でタンパク質が分解され日常的に作られています。毒性が強いため、肝臓で無毒な尿素に作り変えられた後、尿として排泄されます。しかし、残業によるストレスや疲労、飲酒などで肝臓が酷使されていると、分解できず、体の中にたまります」
このイヤなにおいを消すにはどうしたらよいだろうか。五味院長はここで「汗」の効用をこう語るのだ。
「最近の女性は上手に汗をかけないことが多く、それも、疲労臭の発生に拍車をかけています。冷房や冷たい飲み物などの多飲により、汗をかく機会が減ると、汗腺の機能が低下します。そうなると、本来、汗を作る際に汗腺から血液中に戻されていたアンモニアがそのまま汗の中に混じるようになり、『ベタベタ汗』になるのです」
規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠をとり、ストレスをためないこと。酒の飲み過ぎを控えて、納豆や乳製品、野菜など食物繊維や乳酸菌の豊富な食事をとり、腸内細菌の環境を整える。そして、適度な運動を心がけ、「いい汗」をいっぱいかく習慣こそが大事だという。