「半年給与なし。仕事保証なし」  京都・西陣織職人の「弟子募集」はブラックと言えるのか

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熟練職人の年金が引き起こした「破滅的状況」

   いったいなぜ、西陣織の職人はそこまで厳しい状況に置かれているのか。その理由について、佐々木さんは「伝統工芸特有の『年金問題』が原因の一つです」と漏らす。

「いま、西陣織の職人の平均年齢は75歳程度です。こうした熟練の職人は、もう年金を貰っていますよね。そこで起きたのが、年金の支給額を踏まえた上で『工賃』が決まるといった現象なんです」

   佐々木さんによれば、こうした動きによって西陣織全体の工賃の相場が大きく下がることになった。その結果、「西陣織だけでは家族を支えていくことができない」と判断した40~50代の職人が、次々と転職するという動きが出た。

   「つまりは、破滅的状況なんですよ」。こう重々しく告げた上で、佐々木さんは、

「正直、いまの職人の中心層である年金受給者がリタイアしない限り、西陣織の職人の労働環境は改善しないでしょう」

とも話していた。

   ただ、こうした年金問題の中で、本来ならば次世代に技術を伝える役割を担う40~50代の職人が西陣織から離れている。そうなると、いまの中心層がリタイアした段階で「西陣織の職人がほとんどいない」という危機的な状況に陥る可能性が高いという。

   こうした「悪循環」ともいえる状況の中で、「少しでも下の世代に技術を継承したい」という思いで投稿したのが、今回の弟子募集ツイートだ。そのため、佐々木さんは取材の中で、こんな言葉も漏らしていた。

「炎上してしまって申し訳ないとは思いますが、正直な話、この発信力には驚いています。こうした状況にならなければ、西陣織の職人についての投稿がこんなに大きな注目を集めることはなかったでしょう。その点に関しては、本当に嬉しく思っています」
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