伝統工芸の職人と弟子の関係は「ブラック労働」にあたるのか――。京都の西陣織職人がツイッターで弟子を募集したところ、その求人条件が「ひどすぎる」としてインターネット上で批判を浴びる騒動があった。
実際、今回問題となった募集ツイートでは、「最初の半年間は給与が出ない」「その後の仕事も保証できない」などと説明していた。いったいなぜ、こうした厳しい条件で弟子を募集することになったのか。J-CASTニュースは、募集を出した職人に「投稿の真意」を尋ねた。
「ブラックと言われれば、その通りかもしれません」
今回、ツイッターで弟子を募集したのは、伝統工芸士の資格を持つ西陣織職人・佐々木英人さん(45)だ。京都市内の工房で制作した西陣織の帯や小物を、「りんどう屋」というネットショップで販売している。
そんな佐々木さんは2017年3月13日、ツイッターに次のような募集文を投稿した。
「西陣織を習いたい、将来的に仕事にしたい方を募集します。ただし最初の半年は給与的なものも出ませんし、その後の仕事を保証はできません。ただ、この西陣織の職人が減りゆくなか、将来的に技術を覚えておきたい方に無料で教授いたします」
こうした投稿に対し、ネット上では「ブラック企業以下」「やりがい搾取もいい加減にしろ」などと批判的なリプライ(返信)が殺到。なかには、「もう滅べばいいんじゃない」と痛烈な意見を寄せるユーザーも出るなど、いわゆる「炎上状態」となった。
いったいなぜ、こうした募集ツイートを寄せたのか。佐々木さんは15日のJ-CASTニュースの取材に対し、
「タダで労働させようという意図は一切なかったんです。実際、私はいまも1人の弟子を抱えていますが、彼女には自分の都合を優先して貰い、自由に来て貰っています。どちらかといえば、習い事のように捉えて頂きたかったんです」
と話す。弟子を募集する媒体にツイッターを選んだ理由については、「より若い人に興味を持って頂ければ、そういう思いもありました」と説明する。
ただ、ネット上で寄せられた労働条件への批判については「否定できない」という。佐々木さんは「ブラックと言われれば、その通りかもしれません」と認めた上で、
「私自身の仕事を振り返っても、朝も夜も無く働いていますし・・・。改善したいとは思っているのですが、弟子に最初から賃金を払うというのは、ちょっと今の状況では難しいです」
と苦しい現状を明かした。