孤食、学生食堂のぼっち席、さらには便所飯など、この数年間で、一人で食事をすることの様相に変化がみられ、成長や健康面での影響が指摘されてきた。が、
年度替わりによる新生活のなか、社会面や経済面も合わせてそれらの変化や深化が予想されている。
「孤食」が多い高齢者はうつになりやすい
漫画作品からドラマ化され人気番組になった「孤独のグルメ」(テレビ東京系)。こちらも2017年4月からは「Season 6」の放送が始まる。番組は、松重豊さん演じる個人輸入雑貨商、井之頭五郎が街の飲食店に飛び込み発揮する健啖ぶりがハイライト。現代の「おひとりさま」社会を象徴しているようでもある。
ドラマを離れた一般社会では「孤独」でとる食事にはいくつか問題が指摘されている。とくに高齢者や子どもたちだ。
15年10月に東京大学の谷友香子研究員(栄養疫学)らによるプレスリリースや発表会で、「孤食」が多い高齢者は、一緒に食事をする人がいる高齢者に比べてうつになりやすいという研究結果を公表。独り暮らしの高齢者の場合、女性の孤食はうつの可能性が1.4倍、男性は2.7倍だったという。
農林水産省の「06年度食料・農業・農村白書」は「一家団らんの機会となる夕食では、ひとりで食べる子どもは小学生では1割にとどまるが、中・高校生では3割となっている」と指摘。さらに「家族で一緒に夕食を食べたとしても、食べている最中に携帯電話でメールを行う高校生が1割にのぼるなど、家族とのコミュニケーションが希薄になっていることがうかがわれる」と述べている。
子どもの「孤食」は1980年代以降、夫婦共働きが増えるなど家庭環境の変化で増加しているとされる。食事の変化が、睡眠などを含む生活全体にも影響が及び、それが体調不良、情緒不安定をもたらしていると指摘されている。子どもの孤食問題の対策として各地で「子ども食堂」などが設けられている。
急成長する「おひとりさま」市場
「孤食」で育った子どもらが成長し大学生、社会人となって、学生食堂にぼっち席が設けられ、昼食の相手をみつけられない「ランチメイト症候群」が顕在化。同症候群の副作用で便所飯がみられるようになったという。
こうした世代は一方で、現代の急成長部門の一つ「おひとりさま」市場の担い手でもあるよう。厚生労働省の「2015年 国民生活基礎調査」によると同年の「単独世帯」は1351万7000世帯。20年前の1995年は921万3000世帯で、20年間で46.7%も増えた。全世帯に占める割合も26.8%と20年前から4.2ポイント増加しており「おひとりさま」を狙った商品が増えている。