「損失額がはっきりしないことには...」
ある資金運用会社の投資アナリストは、「東芝株の問題点は、1にも2にも(米ウエスチングハウスの)損失額が確定しないことです。損失額がわからないから、投資家が不安になり、手が出しづらくなります。それが再延期で1か月延びたからといって、『大丈夫』とは言いづらい状況に変わりありません」と話す。
東芝が決算発表を再延期する理由は、米国の原発子会社、ウェスチングハウス(WH)の内部統制の不備を調べている監査法人の承認を得られないためだ。
WHの内部統制をめぐっては、損失額を少しでも抑えようと経営幹部が従業員に過度な圧力をかけた疑いが明らかになっている。もともと調査はWHの巨額損失が発覚した2016年12月以降とみられていたが、WHの監査法人はそれ以前にも同様の行為がなかったかを調査する必要があると指摘したとされる。
過去にも不適切な圧力があったとすれば、2016年3月期以前の決算の訂正を検討しなければならなくなるが、「今後の1か月ではっきりするかどうか、見当もつきません」(投資アナリスト)。
東芝は2016年4~12月期の業績見通しで、米原発事業で7000億円を超える損失を計上。連結最終損益(米国会計基準)で4999億円の赤字、自己資本は1500億円のマイナス(17年3月末時点)になる、債務超過を予想している。債務超過を回避するため、半導体メモリー事業を分社化。外部から資本を受け入れる必要がある。
原子力事業ではWHを連結対象から外し、米連邦破産法11条の適用申請を視野に入れている。今後、売上高はピークの半分程度の4兆円弱となる見通しだが、エレベーターや鉄道などの社会インフラ事業を中心に再建を進め、2020年3月期の売上高で4兆円以上、売上高営業利益率は5%程度を目標とするシナリオを描いている。
しかし、前出の投資アナリストは、「事業を切り売りしても損失額が埋まるとは限らないので、出資先を募る必要が出てきますが、これも時間がかかりそう」と、まさに正念場。
その半面、「東芝は『政治銘柄』。日米原子力協定もありますし、原発はメンテナンスにも、廃炉を進めるにしても東芝の技術力は必要になりますから、なくなって(破たん)は困ります。過去の(日本航空のような)再生事例もありますから、さまざまなことが考えられますが、それにしても経営状況がわからないことには...」と、歯切れが悪い。