名古屋ウィメンズマラソンなどで心肺停止になるランナーが3人も出て、自動体外式除細動器(AED)を使うなどして蘇生していたことが分かった。医師は、死者が出てからでは遅いとして、健康管理に注意するよう呼びかけている。
世界陸上の選考会も兼ねて2017年3月12日に行われた名古屋ウィメンズマラソンでは、安藤友香選手(22)が初マラソン日本歴代最高のタイムを叩き出し、20年の東京五輪に向けて明るい話題が生まれた。
心臓マッサージやAEDで蘇生
ウィメンズマラソンには、一般参加者ら2万人近くが参加し、女性大会では、ギネス世界記録を更新した。同時開催の名古屋シティマラソンなどを含めると、参加者は3万5000人近くとなり、マラソン愛好者が多くなっていることを裏付ける形だ。
その一方、3人が一時心肺停止になるなどして、マラソン競技のリスクも浮き彫りになっている。
主催する中日新聞社の事務局にJ-CASTニュースが3月13日に取材すると、うち2人はウィメンズマラソンの参加者だとした。20代女性は、終盤の42キロ付近で倒れ、緊急医療チームが心臓マッサージを行ってAEDを使う前に意識を取り戻した。30代女性は、走り切ってゴール後に倒れたといい、医療チームによるAED処置で回復した。
もう1人は、シティマラソンのハーフマラソンに出た40代女性で、終盤の20キロ付近で倒れ、医療チームがAEDで蘇生させた。報道などによると、3人のうち2人が入院し、20代女性は当日中に退院している。
今回のマラソンでは、1万人に1人ぐらいの割合で一時心肺停止になる人が出たことになる。事務局によると、16年も1人が一時心肺停止になっていた。
医師「慣れてきて、無理をしたことが考えられる」
太っているなどメタボ体質の人や循環器に持病がある人などは、心肺停止になるリスクが高いとされている。2009年の東京マラソンでは、お笑いタレントの松村邦洋さん(49)が倒れ、AED処置で回復している。当時は、体重が100キロ以上もあり、マラソンを走ることに懸念の声も出ていた。
このときは、松村さんも含め一時心肺停止になった人が2人も出ている。その後も、東京マラソンでは、13年に2人のケースが出たほか、17年に入っても、石垣島マラソン(沖縄県)、青梅マラソン(東京都)などマラソン大会でランナーの一時心肺停止を伝える報道が相次いでいる。
今回の3人心肺停止に対し、ニュースのコメント欄では、「亡くなってからでは遅い」「何か対策しないとマズいだろ」「マラソン走らせる前に健康調査をした方が良い」といった意見が支持を集めている。
名古屋ウィメンズマラソンの医療部会長を務めている野口宏愛知医科大学名誉教授は、J-CASTニュースの3月13日の取材に対し、次のように話す。
「3人は、太ったりしておらず、血圧も正常で、リスク要因は確認できていません。マラソンに慣れてきて、無理をしたことが考えられます。風が弱く暑かったとの話もあり、脱水症状も出ていたかもしれません。女性は、男性よりも心肺停止になることが少ないと言われています。昨年は、男性だったので、今回は女性が3人出てびっくりしています。東京マラソンを凌駕するほどの医療スタッフを揃えて万全の体制を組んでいましたが、目が届かないところで倒れれば亡くなる可能性はあったと思います。助かったのは運がよかったと思ってほしいですね。マラソンには自己責任で参加するわけですから、健康調査を受けるなど自分で気をつけるしかないと思っています」