日本の高い衛生レベルはもはや過去?
ところで、気になるのは人への感染リスクだ。迫田教授は説明する。
「実は2016年6月には日本で、現在中国で過去最高規模の人への感染が確認されているH7N9型というウイルスが、海外から持ち込まれた鶏肉から検出されています」
ただし、この型のウイルスが人から人へ感染した例は確認されておらず、中国でも鳥から人への感染が拡大している状態だ。仮に菌が人に付着するとしても、例えば生きているアヒルなどを捕まえて毛をむしったまま手を洗わない、といったかなり濃厚な接触がなければ保菌者となる可能性は低いという。
「とはいえ、我々はこれまで日本が感染した生肉などが持ち込まれることのない、衛生レベルの高い国であるという前提で、人や家禽(家畜の鳥類)への感染リスクを考えてきました。その前提が崩れつつある今、『人への感染リスクもゼロではない』と意識を変える必要があるかもしれません」
探知犬を増やすなどの物理的な施策ももちろんだが、迫田教授は「日本には厳しい検疫があり、肉を持ち込めない」という意識を渡航者に持ってもらうことも重要だと話す。
「動物検疫所がこのような事態を明らかにしたのも、そうした意識の表れではないでしょうか」