ウオーキングにがんの予防効果があることは知られているが、末期がんの患者の「生活の質」(quality of life、QOL)を改善し、前向きに生きる気持ちを高めることに役立つことが明らかになった。
英のサリー大学とロンドン大学の合同研究チームが英医師会誌「BMJオープン」(電子版)の2017年3月号に発表した。
ウオーキングは13種類のがんの発症リスクを下げる
「生活の質」の改善とは、患者の身体的な苦痛を取り除くだけでなく、精神的、社会的活動を含めた総合的な活力、生きがい、満足度を高める意味がある。がん治療を受けている患者は、病気の進行に伴う体調不良に加え、抗がん剤の副作用や手術後の機能低下に悩むことが多い。その中で、いかに自分らしく前向きに生活をするかが、「生活の質」の向上だ。
ウオーキングに関しては、最近、がん予防で驚くような効果があることが明らかになっている。たとえば、米国立がん研究所・同衛生研究所・米国がん学会の合同チームが、2016年5月に「ウオーキングなどの運動を習慣にすると、13種類ものがんの発症リスクが下がる」という研究を発表した。144万人の大規模な健康調査の分析からわかった。それによると、ウオーキングなどの運動を週に5日以上行っている人は、ほとんど行なわない人に比べ、がん全体の発症リスクが7%低くなった。具体的に13種類のがんの発症リスクの低減を効果が大きい順から示すと次のとおりだ。
(1) 食道がん(42%)
(2) 肝臓がん(27%)
(3) 肺がん(26%)
(4) 腎臓がん(23%)
(5) 胃がん(22%)
(6) 子宮体がん(21%)
(7) 骨髄性白血病(20%)
(8) 骨髄腫(17%)
(9) 結腸がん(16%)
(10) 頭脛部がん(15%)
(11) 直腸がん(13%)
(12) 膀胱がん(13%)
(13) 乳がん(10%)
なぜ、ウオーキングががんの発症リスクをこれほど下げるかというと、運動をすると血糖値が下がるので、がん発症の一因となる「インスリン値の乱れ」が正常になる。また、運動にはがん細胞の発生を誘発する「活性酸素」を除去する働きがあり、体全体の免疫機能を高める効果があるからだ。