セブン&アイ・ホールディングス(HD)は、奈良市のイトーヨーカドー奈良店を閉店させる。同店は1989~2000年に営業していた百貨店「奈良そごう」の建物を引き継ぎ、03年7月から営業していた。
この土地、実は天武天皇の孫で、飛鳥時代~奈良時代の権力者、長屋王が8世紀に邸宅を構えていた跡地としても知られる。そごう、ヨーカドーと大型商業施設が続けて閉鎖することになり、奈良そごう開業時の、とある「経緯」や王の最期と結びつけて、インターネット上では「長屋王の呪い」ではないかと、本気とも冗談ともつかない書き込みも出ている。
奈良そごう建設時の調査で発掘される
イトーヨーカドー奈良店は2003年7月に開業。セブン&アイHDは17年3月8日のJ-CASTニュースの取材に対し、同店は業績不振を理由に閉店する方向で進めていると明らかにした。閉店の時期は「協議中」という。イトーヨーカドーはここ数年業績が落ち込んでおり、セブン&アイHDは15年10月、採算が見込めない店舗については閉店を検討していくと発表していた。
閉店後は、やまき(本社・東京都港区)が土地と建物を買い取り、複合商業施設として18年4月のグランドオープンを目指している。
この場所は奈良時代の平城宮の東南角に位置しており、かつて左大臣の位に就いていた長屋王が居住していた。それが分かったのは「奈良そごう」のビル建設前に、奈良国立文化財研究所(現在の独立行政法人 国立文化財機構 奈良文化財研究所=奈文研)が実施した発掘調査。1988年に約4万点もの木簡が出土し、その記録から奈良時代の貴族の詳細な暮らしぶりが分かる大きな発見となった。その後、発掘調査が89年9月まで続いた影響で奈良そごうの建設は遅れ、89年初頭を予定していた開業が同年10月にずれ込んだ。
また、89年9月27日付朝日新聞によると、開業前に敷地内に「(長屋)王の霊を鎮めるほこら」がつくられた。長屋王は権力を得ようとした藤原氏の陰謀で謀反の疑いをかけられ、729年に自害に追い込まれるという最期を迎えたのを受けたといい、「1260年ぶりに掘り起こしてしまっただけに、まずは、王のおん念払い」と伝えている。
「またつぶれるのか」
こうした長屋王をめぐる逸話を背景に、「長屋王邸宅跡に建てられた奈良そごうが2000年に倒産した時、地元で密やかに長屋王の祟りが噂された」と、16年10月発行のNPO法人・平城宮跡サポートネットワーク会報誌に記述がある。
今回のイトーヨーカドー閉店の報でも、ツイッター上では「呪い」や「崇り」と結びつける声が数多く出ている。どこまで本気なのか、一種のネタとして楽しんでいるのかは、よく分からない。
「えええええ...長尾王の祟りじゃ...」
「長屋王の呪いで閉店とか」
「奈良そごうがつぶれてヨーカードーができて、またつぶれるのか。あの地は呪われてるのかも」
「奈良そごうも潰れ、今度はその建物を使ったヨーカドーも潰れる.......。 やはり歴史的遺跡を潰したらそれなりのアレがあるんですよ」
「ヨーカドー閉店となるとまた長屋王のタタリと言う人がどんだけいるのだろうか」
こうした声が出ていることについて、新たに商業施設を立ち上げる「やまき」の関係者に話を聞いたところ、
「我々としては町の再生の意味を込めての計画ですので、現在の地元の方々に認められ、受け入れられれば、昔そこに住んでおられた方々も評価してくれるのではないかと考えています」
と話していた。
もっとも、これまでの2店の閉店の現実的な原因として、アクセスの不便さも指摘されている。イトーヨーカドー奈良店のウェブサイトによると、最寄り駅の近鉄奈良線「新大宮駅」からは徒歩20分かかる。近隣には近鉄奈良線「大和西大寺駅」徒歩3分と駅近のショッピングセンター「ならファミリー」や、「イオンモール」などの競合がひしめいている。そのためツイッターにはこんな声もあがっていた。
「新大宮のやつか。駅から地味に遠くて行ったことないな」
「ヨーカドー奈良店は電車で行くにも車で行くにも中途半端な場所」
「まあもとから奈良のヨーカドーはアクセス悪いからなあ...」
「近隣に奈良ファミリーと高の原&大和郡山&学研奈良登美ヶ丘の3つのイオンモールというライバルがいる」