「村への愛着は今もあります」
2016年春に郡山市内の会社に就職した田村さんは、社会人として忙しい毎日だ。2017年3月31日には、田村さんが住んでいた地域の避難指示が解除される。だが、田村さんの「村に帰らず、郡山での生活を続けていく」という気持ちは揺るがない。
田村さんは、飯舘出身の若者として決して例外ではない。復興庁が2017年3月7日に発表した「原子力被災自治体における住民意向調査」を見ると、飯舘村住民の「帰還の意向」は、29歳以下の場合「戻らないと決めている」が50.0%に達し、「戻りたい」の10.0%を圧倒した。
では、今の飯舘村は田村さんにとってどんな存在か。ふるさとに対する気持ちは変わってしまったのか。しばらく「うーん」と考え込んだ後、こう答えた。
「僕にとって、飯舘が生まれ育った場所である事実は変わりません。思い出は多く、村への愛着は今もあります。しかし現実と未来を考え、郡山での暮らしを選択しました。将来、自分が飯舘の復興のために何かできるなら、もちろん力を尽くしたい」
最後に田村さんは、飯舘で暮らしていたころの写真を見せてくれた。震災前の2009年、「何の気なしに」撮ったというスナップ写真だ。自宅から少し離れた場所の景色、高校時代の通学路――。懐かしいあの日のふるさとが少しの間、よみがえった。(この連載は随時掲載します)