空のピーチとバニラの相性は? ANA子会社戦略に注目

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   ANAホールディングス(HD)は、格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーションを2017年4月に子会社化する。安い運賃を武器としたLCCは今後も市場拡大が見込まれ、ANA・HDはピーチの成長を取り込みたい狙いとされる。だがピーチはこれまでユニークな経営が競争力の源泉とされており、子会社化により独自性が維持できるかが課題となりそうだ。

   ピーチは2011年、ANA・HDと官民ファンドの産業革新機構、香港系ファンドのファーストイースタンが共同出資して設立した。ANA・HDは今回、他2社から保有株式の一部を計約300億円で買い取り、持ち分比率(議決権ベース)を現在の38.67%から67%に引き上げる。

  • ANA・HD「ピーチの成長を取り込んでいきたい」(公式ウェブサイトより)
    ANA・HD「ピーチの成長を取り込んでいきたい」(公式ウェブサイトより)
  • ANA・HD「ピーチの成長を取り込んでいきたい」(公式ウェブサイトより)

「ピーチの成長を取り込んでいきたい」

   ピーチは関西国際空港を拠点に、現在、国内外27路線で就航する。累計旅客数は1700万人に上り、「国内LCCでは最も成功した企業」(航空業界を知る関係者)と呼ばれるほどだ。その力の源泉はユニークな経営だと言われている。元々ピーチは、ANAの社内ベンチャーから始まり、周囲から縛られたくないという姿勢が強いとされてきた。そんなピーチのポイントの一つが、関空に地盤を置いたことだ。24時間利用が可能なうえ、専用ターミナルも活用でき、コストを低く押さえることに成功。地域に密着した姿勢は地元経済界から好感され、利用増につながっているとされる。

   また桃色という斬新な機体カラーは女性客をはじめ、桃を縁起物ととらえる台湾人らの心もつかんだ。機内食では大阪名物の「たこ焼き」を提供するなど、話題性も常に豊富だ。競争激化でLCC各社が苦戦する中でも、2016年3月期の最終利益は過去最高を更新し、「ピーチの独り勝ち」とも言われている。

   LCCのシェアは欧米では3~4割とされるが、日本ではまだ10%程度。訪日外国人が急増する中、国内線の乗り継ぎを含め、今後の市場拡大が確実視される。ANA・HDの片野坂真哉社長は記者会見で、「ピーチの成長を取り込んでいきたい」と語ったように、子会社化で自身の成長につなげたいと狙っても当然といえる。

相乗効果を発揮するのか、一つに集約していくのか

   一方、ピーチ側は現在18機の機材を2020年にはほぼ倍増の35機にしたうえで、路線を拡大したい方針で、今後の機材調達などにはANA・HDの支援が期待できるととらえている。

   ただ、「ピーチの強みだった経営の独自性は維持できるか」(航空関係者)という疑問の声は根強い。片野坂社長は「ピーチの独自性を尊重しながら、親会社としてサポートする」と述べたが、これはそんな不安を払拭する配慮だったとみられている。

   今後、特に不透明になるとされるのが、ANA・HDが100%子会社として抱えているLCC、バニラエアとの関係だ。二つのLCCが一つの航空会社の中に存在しているのは、明らかに非効率といえる。ピーチはあくまで独自路線を貫く構えだが、片野坂社長は「一緒にするかどうかは今後考えていくテーマ」とも述べ、含みをもたせた。

   二つのLCCが今後、相乗効果を発揮するのか、一つに集約していくのかも注目点の一つといえる。

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