あなたはプールでオシッコをしたことがあるだろうか。プールの水が驚くほど多くの尿で汚染されていることがカナダ・アルバータ大学のチームが新たに開発した分析方法で明らかになった。
研究成果は米科学誌「Environmental Science&Technology Letters」(電子版)に発表された。単に気持ちが悪いというレベルを超えて、泳ぐとぜん息を引き起こすなどの健康被害が心配されている。
学校のプールに大型ペットボトル40数本分の尿
アルバータ大学の2017年3月3日付発表資料によると、同大学のシン・ファン・リー教授と大学院生のリンゼイ・ブラックストックさんは、プールの「尿汚染」の実態を知るため、カナダの2都市にある公営プール29か所の水のサンプルを採取し、新しい分析方法によって調べた
2人が人間の尿の「証拠物件」として着目したのは、「アセスルファムカリウム」という成分。砂糖の200倍の甘さをもつ人工甘味料だ。カロリーゼロなので、最近は食品添加物として、調味料、菓子、アイスクリーム、ジュース、ジャム、漬け物、清涼飲料水などあらゆる食品に含まれている。分子が非常に小さいため、腸から吸収され肝臓を経由し血管内に入り体中を巡る。そして、最終的に腎臓に運ばれ尿から排出される。代謝されずそのまま体外に出る。人工物で自然界に存在しないから、プールの水から発見されれば、誰かがオシッコをした「証拠」になるわけだ。
29のプールの水をテストした結果、どのプールでもアセスルファムカリウムの濃度が普通の水より高かった。もれなく尿に汚染されていた。そこで、大小2つの公営プールを選び詳細に水を分析した。1つは約83万リットル、もう1つは約42万リットルの水量だ。アセスルファムカリウムの濃度から推測した結果、約83万リットルのプールでは約75リットル(0.009%)の尿が、約42万リットルのプールには約30リットル(0.007%)の尿が混じっていた。
これがどのくらいの量かというと、小学校などにある標準的なプール(25メートル×8コース)の水量が約48万リットルといわれる。その0.009%というと43リットルだ。小学校のプールに1リットルの大型ペットボトルで43本分のオシッコをドボドボと注ぎ込む計算になる。かなり多いことがわかる。