神奈川県湯河原町は、町内に分娩可能な産科病院がなく、妊婦が安心して出産できる状況ではない問題を解消するため、近隣の自治体の産科病院に妊婦を搬送する専用の緊急車両を配備することを決めた。
NHKなどでは「産急車」という名称で運用予定といった報道も見られたが、通常の救急車とは別に、妊婦のためだけの単独運用になるようだ。
一般救急車と同じ機能を備える
湯河原町は2017年2月22日に発表した町の基本目標の中で、「産急(サンキュー)車の導入事業」という項目で、「赤色灯とサイレンを付けた妊婦専用のワゴン車を、救急車以外の緊急車両として配備」と説明している。
「産急車という名称が先走ってしまい、救急車とは異なる車両だと思われているのですが、基本的にはスケールダウンした『救急車』として配備する予定です」
J-CASTヘルスケアの取材に対し、湯河原町消防本部の大出勝之署長はこう答えた。スケールダウンとはいっても、装備は標準的な救急車と同等で、車両サイズがやや小さめになるようだ。高度な対応は難しいが、一般的な救急車に求められる処置は可能。救急車なので配備先も消防署を予定しており、産急車という仮称も変更する予定だという。
「ただし、あくまでも妊婦の方々のために配備する車両なので、救急車として通常の救急搬送などに運用する予定はありません」
配備予定数は1台。妊婦専用の救急車となる。
2018年4月に運用スタートへ
2月16日付の神奈川新聞電子版は、利用を予定している妊婦は事前登録が必要だと報じた。利用者を限定するためではなく、連絡を受けた消防本部が本当に妊婦かを速やかに判別するためだ。大出署長は報道内容を認めたうえで、湯河原町民のほか、消防が管轄している隣の真鶴町民も利用できるとこたえた。
「登録されていない妊婦の方でも車両が利用できる場合は出動可能にするなど、柔軟な運用ができるようにしたいと考えています」
妊婦のためとはいえ緊急車両であり、タクシーではない。妊婦健診など日常的な通院の足代わりとしての利用はご法度だ。突然の破水や陣痛といった緊急時か、出産のための入院時などに119番に連絡することで呼び出せる。
運用開始予定は2018年の4月1日で、同年1月1日から利用者登録の受付開始予定だ。