JR九州、株価も快走 業績上方修正の期待と警戒感

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   JR九州が2017年2月、3月と上場来高値の更新を続けている。上昇基調が強まったのは2月8日に17年3月期の業績を上方修正して以降。業績改善が素直に好感されているようだ。

   民営化は他のJR各社と同様に1987年だが、JR九州が上場したのは昨2016年10月。上場来高値と言っても上場してから半年も経っていないのでやや大げさな印象もあるが、上場後に株価が急落して投資家を困惑させる銘柄が少なくない中、JR九州株が健闘しているのは間違いない。

  • JR九州が上場来高値の更新を続けている(画像はウェブサイトより)
    JR九州が上場来高値の更新を続けている(画像はウェブサイトより)
  • JR九州が上場来高値の更新を続けている(画像はウェブサイトより)

減損と「鉄道施設使用料」一括前払い

   上方修正の内容は次のようなものだ。2017年3月期の最終損益は407億円の黒字の見込みとなった。従来予想より黒字額が25億円増える計算だ。売上高は前期比0.9%増の3814億円、営業利益は2.6倍の544億円で、どちらも従来予想より26億円多い。熊本地震でダメージを受けた鉄道収入の回復が想定より早まったことなどによる。

   2016年3月期の最終赤字4330億円と比べると、急激な変化だ。これには、JR九州が「身ぎれい」になって株式を上場したからくりが大きく2つある。それは、分割民営化でJR九州が発足して以来赤字続きだった鉄道事業を黒字化させるためのものだった。

   1つ目は、鉄道事業の固定資産の帳簿価格を引き下げる「減損」と呼ばれる会計処理を行ったことだ。2015年3月期に約2800億円だった価格は、「当初想定していた収益を見込めない」と位置づけたことで6億円余りにまで減額された。この3000億円近い損失は最終赤字に反映されたが、その効果は2017年3月期以降の減価償却費の減少として表れる。もう1つは鉄道建設・運輸施設整備支援機構に支払う九州新幹線の鉄道施設使用料2205億円(約20年分)について全額を一括前払いしたこと。この2つの処理の結果、2017年3月期に鉄道事業にかかる費用は前期比300億円以上減り、発足以来初の鉄道事業黒字化につながるわけだ。

観光列車「かわせみ やませみ」の運行スタート

   JR九州はもともと、鉄道以外の不動産や小売りといった多角化事業で安定的に利益をあげられるのが強みだった。三大都市圏のように多数の乗客を見込めない一方で不採算のローカル線を抱えることもあり、豪華列車「ななつ星」のような成功はあっても鉄道事業は苦戦を強いられる宿命にある。

   何とか鉄道事業のスタート台を黒字基調にすることで上場に至ったわけだが、実際に鉄道事業で黒字転換を図れ、その規模が従来予想より拡大することが見えてきたため、市場がわきたち、連日の上場来高値となった。3月に入り、車両に地元木材をふんだんに使った熊本県内(熊本―人吉間)を走る観光列車「かわせみ やませみ」の運行がスタート。今も予約困難な「ななつ星」のように観光客を引きつけるようになればさらに株価が上昇するかもしれないが、「JR九州株はさすがに高値警戒感が出てきた」(国内証券系アナリスト)との声も出始めた。

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