北朝鮮の金正男氏(45)の暗殺事件をめぐり、北朝鮮とマレーシア間の外交関係は「人質合戦」の様相を呈してきた。両国が互いの大使を国外退去処分にしたのに続いて、北朝鮮は同国に滞在しているマレーシア国民の一時出国禁止を通告。
マレーシアは、この措置を「人質」だと反発し、同様の措置を発動した。これに加えて、マレーシアは、北朝鮮労働者37人を不法滞在の容疑で逮捕した。北朝鮮滞在中のマレーシア人は11人に過ぎないのに対して、マレーシアには約1000人程度の北朝鮮人が滞在しているとみられる。この多くは工事現場や鉱山の労働者だとみられ、北朝鮮の外貨稼ぎにもメスが入ることになりそうだ。
就労許可証の有効期限切れで37人逮捕
北朝鮮の国営朝鮮中央通信は2017年2月7日、すでに一時帰国している駐北朝鮮マレーシア大使の国外退去処分に続いて、北朝鮮外務省が
「当地のマレーシア大使館に対して、マレーシアで発生した事案が公正に解決され、マレーシアにおける北朝鮮外交官と市民の安全が完全に保証されるまで、マレーシア国民の出国を一時的に禁止することを通知した」
と報じた。マレーシアのナジブ・ラザク首相は同日、この措置は「人質」だとして、
「気まぐれや思いつきでふるまうことは許されない。人質を取ることは国際法違反であり、マレーシアだけでなく世界にとって全く受け入れられない」
と強く反発。マレーシアに滞在する北朝鮮人についても同様の一時出国禁止措置を発表した。
マレーシア側は、北朝鮮側よりも強い態度で臨むようだ。現地紙のニュー・ストレーツ・タイムズによると、ボルネオ島にあるサラワク州の入国管理局、海洋警察などが3月8日、北朝鮮の労働者37人を、ビザを不正に利用した容疑で逮捕した。北朝鮮人は、今回の事件が起こるまでは、ビザなしでマレーシアに滞在することができたが、働くには就労許可証が必要だった。この許可証の有効期限が切れたままマレーシアで働いていた容疑だ。37人は、橋の建設現場で働いていたという。