「無事出産できるようにお世話お願いします」。ペットショップの店主が窃盗犯に対してツイッターで投げかけた言葉が感動的だとネットで話題になっている。
寒い時期は従業員が店に常駐しているが、たまたま店から離れた深夜から明け方にかけトカゲやカメといった爬虫類だけが26匹盗まれた。中には間近に産卵を控えているものもいる。暖かい場所で餌をあげなければみんなすぐに死んでしまう。そして店主は「返してくれるのを24時間待つ、警察には通報しない」、と呼び掛けた。
すぐに死んでしまいます
盗難があったのは東京立川市のペットショップ「ヒロパーク」。代表の山沢弘和さん(46)がこの店を構えて数年だが、キャリアは20年というベテランで山沢さんのファンも多い。そんな山沢さんが2017年3月5日にツイッターとブログで、「盗難した方へ」と呼び掛けた。盗んだものを無事に全て返してくれるなら警察には通報しない。3月5日7時から24時間待つ、とした。盗まれた生体全ての種類を書き、
「今の時期まだ寒いので最低限、保温はしてあげてください。餌もあげてもらわないと、すぐに死んでしまいます。戻ってくるか、わかりませんが、持っている間はお世話お願いします」
とお願いをした。また、トカゲの中には3月に産卵する予定の生体もいて、30度前後で飼育管理をしなければ母親とお腹の中の卵(子供)も全部死んでしまう、とし、
「無事出産できるようにお世話お願いします」
と懇願した。
こうしたツイートには、
「さっさと返しなさい!!お腹の子の命に責任持てますか! 腹立つ??!!」
といったリプライがあり、ネット上でもちょっとした騒ぎになった。24時間過ぎても犯人からの連絡はなく、山沢さんは立川署に通報する。
「掃除もしていった?」と思わせるほど床がきれい
J-CASTニュースが3月8日に山沢さんへ取材したところ、寒い時期は従業員が店に常駐し世話をしているが、5日はたまたま深夜0時から早朝5時までの間にスタッフが店を離れ誰もいない状態になった。スタッフは店から1分ほど離れた場所に住んでいて常に行き来をしているため勝手口は無施錠の時が多く、そこを狙われたのだという。驚いたのはばらばらな場所に展示していた爬虫類だけを26匹盗まれたが、「まるで売り買いしたように」売り場が荒れておらず、「掃除もしていった?」と思わせるほど床がきれいな状態だった。カメも盗まれたが床に水滴も無く、
「どこに何があるか全部把握していないとできない」
犯行現場だったそうだ。
通報まで24時間待ったことについてネット上では、知人や内部の犯行を予想したからではないか、という指摘もあるが、山沢さんはそうした考えは全くないとし、過去に同じような対応をした店があり、犯人が生体を戻したことを知っていて、それに習ったと説明した。ネットで訴えたことに多くの人が反応してくれて感謝をしている、とも話していた。警視庁は26匹のうち希少種の5匹(販売額約149万円)に絞り被害届を受理し捜査を始めている。山沢さんの心配はやはり盗まれた生体が生きているのかどうかだ。
「きちんと管理し育てるような人が、産卵を控えた生体を盗むと思いますか?」
と悲しげだった。