住所や電話番号も特定され、嫌がらせの電話が殺到
このように、少年へのバッシングが異様に過熱する状況で思い出されるのが、米大リーグで起きた「スティーブ・バートマン事件」だ。
これは、2003年のナ・リーグチャンピオンシップに出場したシカゴ・カブスのファンをめぐって起きた騒動だ。勝てば95年ぶりのワールドシリーズ出場が決まるという大一番の試合で、カブスファンの男性がファールゾーンに飛んだ打球を取ろうと手を伸ばし、結果としてカブス選手の守備を「妨害」してしまった。
このワンプレーをきっかけに、カブスは3点差をひっくり返されて逆転負け。試合後、カブス選手の守備を妨害した男性ファンの様子が、ニュース番組や新聞などで繰り返し報じられた。こうした報道をきっかけに、その男性がスティーブ・バートマンという26歳の青年だということがすぐさまネット上で「特定」された。
バートマン氏の住所や電話番号も特定されたため、自宅には嫌がらせの電話が殺到。当時の現地報道によれば、試合当日は、帰宅したバートマンの身を守るため、6人の警官が自宅前で警備に当たったという。
このバートマン事件については、米スポーツ専門局「ESPN」が2011年にドキュメンタリー番組を放送。その中では、バートマン氏への批判が高まった一因として、問題のシーンを何度も放送したメディアにも責任があると指摘していた。
今回の侍ジャパンの「幻のホームラン」をめぐって、ネット上ではすでに「バートマン事件」の再来を危惧する声も出ている。それに合わせて、メディアの「行き過ぎた」報道を批判する動きも高まりつつある。