「青々とした緑」といった、視覚的な認識では誤っているような日本語の表現は、平安時代以前から使われていた名残で、今現在も日本語における色の表現は進化し続けている――。
そんな研究結果が、東北大学電気通信研究所の栗木一郎准教授らの研究グループによって2017年3月2日発表された。
口語でよく使う色の表現は19色
東北大学の報道発表によると、人間の視覚は 100 万もの微細な色の違いを見分けられるとされるが、日常的に人と話す際に言葉として使われる色名は「赤」「緑」「青」「黄」など少数に限られている。栗木准教授らはこの色数を調査するため、日本語を母国語とする57 人の被験者に320色の色見本を1つずつ見せ、「一言で表すと何色に分類されるか」調査を実施。結果を解析した。
その結果、日本語話者に共通する色の表現は「赤」「緑」「青」「黄」「紫」「ピンク」「茶」「オレンジ」「白」「灰」「黒」という世界中で見られる基本表現11色と、独自表現の「水(色)」「肌(色)」「抹茶」「黄土」「えんじ」「山吹」「クリーム」8色となった。
30年前に行われた同様の研究結果と比較すると「水」が新たに加わっており、色の表現が時間とともに進化する様子を示す有力な証拠になるという。 その一方で「青々とした緑」「緑色の青信号」など「青」と「緑」の混用は変化していなかった。そこで、平安時代以前の日本の和歌で「青」と「緑」の用法についても調査したところ、同様に混用されていたことが判明した。
現在の19色の色表現の中で青と緑は明らかに区別されているものの、栗木准教授らは、平安以前の表現の名残が一部のものに残ったのではないかと推測している。