石油輸出国機構(OPEC)加盟国、非加盟国が足並みをそろえた原油減産が、かなり順調に進んでいる。これを受けて原油相場も堅調に推移しているが、米国のシェールオイル増産も予想され、相場の先行きについては、軟調と見る向きも多い。それでも、2017年3月初旬現在、1年前と比べればかなり値上がりしており、国内物価にはジワリと影響がでてきた。
ここ数年は、シェール革命といわれる米国を中心としたシェールオイル開発の進展が相場の強烈な下押し要因となってきた。シェールオイルは、地層の隙間にたまる従来の原油と違い、頁岩(シェール)層に混ざった状態で存在するため、従来技術では採取が困難だった。これが、技術開発でコストが原油に近づき、一気に市場に流入。2008年に1バレル=140ドル台まで上昇した原油相場を50ドル以下のレベルまで下落させ、2016年1月には20ドル台まで押し下げてきた。しかし、直近では50ドル台と、1年前に比べると大きく上昇している。
シェールオイルと「覇権争い」
シェールオイルは、特に米国など北米で開発が進展したことから、米国が「産油国」として復活するとともに、アラブを中心とするOPECと米国の、国際石油市場をめぐる「覇権争い」の様相も呈してきた。
目下の原油の生産量と価格の基本構図は、シェールオイルの増産→値下がり→シェールオイルがコスト割れ→生産減→相場が持ち直す――というもの。ただ、シェールオイルの生産コストも漸減していることから、相場は全般的に低下傾向だ。
従来、需給が緩んで相場が落ちると、OPECの盟主、サウジアラビアが減産して相場を引き締めるという調整弁の役割を果たしてきた。しかし、これではシェアを失うばかりだとしてサウジが自主的減産をしない方針に転じたため、サウジ、他のOPEC諸国、ロシアなど非加盟国、米国(シェールオイル)が入り乱れ、価格下落にどこまで耐えるか、チキンレースの様相もみせていた。
長年のテーマだったOPEC加盟、非加盟各国の協調減産は、こうした構図の中でなかなか実現しなかったが、2016年11月、ついに減産合意が成立。国内政治状況が不安定なナイジェリア、リビア、イランを除くOPEC10か国が、生産量を合計で日量120万バレル減らし、サウジが49万バレル減など国別生産枠を設定。ロシア、メキシコなど非加盟11か国も計55.8万バレル減産に応じた。
実施はいずれも2017年1月からで、2月中旬に発表された実績は、OPECが日量約110万バレルを削減し、目標の120万バレルの9割を達成。非加盟11か国の1月の減産は計30万バレル強と、目標の6割程度にとどまったが、全体としては、まずまずの出足となった。
しかし、原油相場は、こうした減産にあまり反応していない。ニューヨーク原油先物は減産実績が公表されても、1バレル=53ドル前後での取引が続いている。価格下落要因と、上昇要因が錯綜しているのだ。