全国の百貨店が相次ぎ閉店している。
2017年2月28日、セブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下のそごう・西武が運営する茨城県つくば市の西武筑波店と大阪八尾市の西武八尾店が閉店。その前日には、さくら野百貨店仙台店を運営するエマルシェ(仙台市)が仙台地裁に自己破産を申請して営業を停止するなど、閉店ラッシュが止まらない。
そごう・西武はこの1年に5か店を閉店
西武筑波店が2017年2月28日、32年の歴史に幕を下ろした。茨城県つくば市で唯一の大型百貨店として、また地域のシンボルとして親しまれてきたが、最近は業績の低迷に苦しんでいた。
西武筑波店は1985年開業。ピーク時(1992年2月期)の売上高は248億円だったが、2016年2月期は128億円と半分まで落ち込んでいた。専門店を多く抱える大型ショッピングセンターが出店した影響や、2005年につくばエクスプレス(TX)が開業すると、多くの顧客が都心部の百貨店に流れた。
また同日、大阪府八尾市の西武八尾店も36年にわたる営業に終止符を打った。
セブン&アイHD傘下のそごう・西武が運営する「西武」「そごう」といえば、かつては三越や伊勢丹、高島屋や松坂屋などとともに、日本を代表する百貨店大手だ。
ところが、そごう・西武は2016年2月29日に西武春日部店(埼玉県春日部市、旧ロビンソン百貨店)を閉店。同年9月30日には西武旭川店(北海道旭川市)とそごう柏店(千葉県柏市)を相次ぎ閉店。西武旭川店は1975年に開業。JR旭川駅前に立つ道北唯一の百貨店として栄えた。一方、そごう柏店もJR柏駅東口の商業拠点として栄えたが、周辺商業施設との競争が激化して売り上げが低迷。43年の歴史に幕を下ろした。
百貨店の閉店ラッシュは、そごう・西武だけではない。
2016年6月には岩手県花巻市のマルカン百貨店が惜しまれつつ閉店。2017年3月に、三越多摩センター店(東京都多摩市)と三越千葉店(千葉市)が、17年7月には堺花田阪急(大阪府堺市)や大丸浦和パルコ店(埼玉県浦和市)の閉店が予定されている。
宮城県仙台市では「さくら野百貨店仙台店」を経営するエマルシェが2017年2月27日、仙台地裁に自己破産を申請し、破産手続き開始の決定を受けた。負債総額は約31億円。東日本大震災の影響や、周辺で新たな商業施設が開業して競争が激しくなったことが響いた。
閉店に追い込まれているのはいずれも、業績が振るわない地方店ばかり。開業して30年、40年超と歴史がある店舗で、老朽化が進んでいることもある。
人口減少やネット通販が客を奪う
人口減少や個人消費の冷え込み、さらにはショッピングセンターやインターネットによる通信販売の広がりで百貨店はお客を奪われている。また、地方部ほど「爆買い」効果が薄く、景気はなかなか上向かないため、お客は節約志向を強めて百貨店に行かなくなる。
その一方で都心部の百貨店は、減少傾向にはあるものの、なお「爆買い」ニーズは見込めるし、買い物をしてくれる富裕層の存在が大きい。地方店の低迷を都市部の旗艦店などが「穴埋め」して支えているのが現状だ。
閉店が相次ぐ地方の百貨店だが、閉店しないまでも、セブン&アイHDが関西にあるそごう神戸店(神戸市)などの3か店を、阪急・阪神百貨店を運営するエイチ・ツー・オーリテイリングに譲渡するなどして存続を図ったり、売り場面積を縮小したりする百貨店は少なくない。
百貨店の立地は、地方店でも駅近くで利便性がよく、街の中核を成している。ただ、閉店後のテナントが決まらない店舗は少なくなく、百貨店の閉店とともに「街の灯」が消えてしまう懸念さえある。
2016年6月に閉店した岩手県花巻市のマルカン百貨店で人気だった展望大食堂(6階)が、17年2月20日に営業を再開。存続を求める声が集まり、なんとか「復活」に道筋をつけたたが、地方店でこうしたケースはごく稀なことのようだ。