東京都の築地市場(中央区)の豊洲市場(江東区)への移転問題をめぐり、移転を決定した当時の都知事である石原慎太郎氏(84)が2017年3月3日、都内の日本記者クラブで会見した。
石原氏は「裁可したことの責任は認める」とした一方で、行政全体に責任があるとも指摘。新事実が明らかにされることは特段なく、全体的には「自分は下から挙がってきた意見を認めただけ」というニュアンスの発言が目立った。
「私は総意として挙がってきたものを認可した」
石原氏は冒頭で「(3月20日の)百条委員会に呼ばれているが、とてもそれまで待てない心境。座して死を待つつもりはない」と、委員会に先がけて会見を開いた理由を明かした。
豊洲移転については「私は当時の最高責任者として承諾した。行政の責任は裁可した最高責任者にある。これを私は認める」と自らの責任を認めたが、「最後に裁可した私一人の責任というよりも、行政全体に責任がある」とも強調。そして現在の混乱の責任は、あくまで現都知事の小池百合子氏にあると主張した。
石原氏は、そもそも豊洲移転案は、自身が都知事に就任した1999年時点で既定路線になっていたという。ただ、敷地内の土壌汚染が発覚したのは就任後だ。それでも移転に踏み切った理由を聞かれると、
「私は専門家ではないので、専門部局の環境局や港湾局などに一任する以外なかった。最終的に市場長に『大丈夫なんだろうな』と聞いたら『今の技術をもって大丈夫です』と言うから裁可した」
「こういった問題は司(つかさ)、司で知恵を出して決めていく。その総意として挙がってきたものを私は認可した」
などと説明。この「自分には専門性がないので専門家に従うしかない」という主張はその後も繰り返し登場し、司会を務めた読売新聞特別編集委員の橋本五郎氏から「だったら何のために知事はいるんですか?」とツッコまれる場面もあった。
「瑕疵責任の留保、私は報告を受けていない」
会見では、報道陣から「瑕疵(かし)担保責任の免責」についての質問も相次いだ。東京ガスから都に土地が譲渡された後、新たに汚染が発覚したとしても東京ガスに新たな対応を求めないとした取り決めのことだ。
石原氏はこの件について、そもそも16年秋に東京都側から質問されるまで知らなかったと説明。東京ガスとの交渉はすべて副知事だった福永正通氏、浜渦武生氏らに一任していたといい、「瑕疵責任の留保というものがどういう条件で、成就したのかは分からない。私は報告を受けていない」と述べた。
東京ガスとの協定書に署名や押印をしたかどうかについて聞かれると、
「私自身が東京ガスとの契約書にサインした覚えはない。少なくとも、その疑惑はない。担当者の誰かが何らかの形でサインをしたのだろう。その時に私のはんこが使われたということではないか」
と語った。自身は契約の詳細については知らず、すべて部下任せだったということを、自ら明らかにした。
小池氏「石原さんらしかったのでは」
小池都知事は3日、石原氏の会見後に報道陣の取材に応じると
「中身がよくわからなかった。色々と新しいことをおっしゃるのかと思ってたが、せっかくの記者会見だったのに残念」
と述べた。「自分は知らなかった」という主張を繰り返した点については、
「それ以上おっしゃらなかったのはとても残念。むしろ明確に話したほうが、石原さんらしかったのではないかと思う」
と評した。
また、石原氏が会見で、東京ガスとの交渉に関わった人物として名前を挙げた東京都元知事本局長の前川燿男・現練馬区長が、3日夜に緊急の記者会見を開き、前川氏自身は2005年に都を退職しており、交渉を担当した事実はないとして、「根本的な石原さんの思い違い」と反論する一幕もあった。