高級「新コンデジ」でズッコケた ニコンに「V字回復を期待」のワケ

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   年明け以降、高値圏にあったカメラの老舗、ニコンの株価が2017年2月14日に急落した。終値は前日比15%安。前日取引終了後に発表された17年3月期の業績予想の下方修正などに反応したものだ。その後は値を戻しているが、2016年来高値(2016年2月5日の1906円)をうかがおうとした一時の勢いは失っている。先行きについてアナリストの見方は分かれており、業績の回復を見通せないのが実情だ。

   急落前、2月13日までのニコン株はむしろ上昇基調にあった。主力のデジタルカメラ事業はリストラ策が進行中の反面、液晶パネルなどディスプレー向け露光装置が好調なことなどから業績回復期待で買い進まれていた。13日の取引時間中の高値は1894円で、2016年来高値まで12円に肉薄。取引終了後の業績見通し発表の内容次第で、14日に高値を更新したとの声もあった。しかし、株式市場は失望売りで反応した。

  • 創業100周年のニコンだが…(写真はニコンのウェブサイトより)
    創業100周年のニコンだが…(写真はニコンのウェブサイトより)
  • 創業100周年のニコンだが…(写真はニコンのウェブサイトより)

希望退職に想定上回る応募者

   発表内容を確認してみよう。業績関連は後で説明することにして、問題点として指摘するアナリストがいるのが、発売を予定していた高級コンパクトデジカメ「DLシリーズ」3機種の発売を中止したことだ。スマートフォンの普及で低価格デジカメの販売には相当な壁があるため、コンデジは10万円前後の高級機種が各社の勝負のしどころとなっている。ニコンも当初は2016年6月に発売予定だったが、発売直前に不具合が分かったため発売を延期していた。不具合を克服すべく開発を進めていたが、「採算が見込めない」として発売断念を決めたのだ。発表した製品の発売中止はニコンとして極めて異例。

   想定より高級コンパクトデジタルカメラ市場の縮小が進んだためだが、ニコンとしては収益改善の切り札との位置づけでもあった。これについてSMBC日興証券が出したコメントは「ニコンらしさの消失が懸念される」。ニコンがリストラを進め、採算を重視することは結構だが、独自の発想で攻める姿勢が薄れれば結果的に消費者が遠ざかることを危惧したようだ。

   また、ニコンは2月13日、10日まで実施した国内従業員対象の希望退職者の募集結果も発表した。応募者には特別加算金を上乗せした退職金が支払われ、3月31日付で退職する。応募者はニコンが想定した1000人を上回る1143人に達した。国内従業員の約1割に相当する。2017年はニコンにとって創業100年の記念すべき年だが、リストラに踏み込む厳しさを伴っている。

FPD露光装置市場の見通しが...

   それでは業績はどうか。人員削減に伴う一時的な損失が膨らんだことで2017年3月期の業績予想は純損益が90億円の赤字(前期は182億円の黒字)と、従来予想より30億円赤字が拡大することを見込む。売上高は7500億円(従来予想8000億円)、営業利益は440億円(同490億円)といずれも下方修正した。デジタルカメラ販売の苦戦などが響く。

   ただ、楽観する見方もある。野村証券が14日に出したコメントは「FPD露光装置市場の見通しが明るくなってきた」。FPDは「フラット・パネル・ディスプレイ」の略語で、FPD露光装置と言えば薄型テレビなどに使われる、液晶パネルなど薄型ディスプレーを作るための機械だ。ニコンの得意とするこの市場が拡大する見込みのため、「V字回復を期待する」ともしている。デジタルカメラが不振なのは事実だが、リストラも進んでいるので業績としては底が見えてきたということだろうか。

   専門家の見方は分かれるが、足元で業績が冴えないのは事実。株価を上昇気流に乗せるには「高級コンデジに代わるもの」など、具体的な業績回復策が求められそうだ。

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