最強の抗生物質も効かない「悪夢の耐性菌」
【カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)】
CREは、米国疾病対策予防センターが「悪夢の耐性菌」と名づけ、最近、最も注目を集めている耐性菌だ。日本でも2014年9月にCREが全患者数を報告する疾患に指定され、医療機関が感染を疑われる患者を診断した場合には保健所に届け出ることが義務付けられた。それほど怖い耐性菌なのだ。
CREは、一言でいえば「カルバペネムに耐性を示す腸内細菌科の細菌」だ。カルバペネムとは、現在のところ感染症に対する「最後の切り札」となる最強の抗生物質だ。神経障害や意識障害の副作用の心配があるため、よほどのことがないと使わない。それが効かない細菌だ。「腸内細菌科の細菌」と言っても腸内に住む細菌とは限らず、大腸菌や肺炎桿菌(肺炎の原因菌)も含まれる。だから、最強の抗生物質が効かない大腸菌や肺炎菌がCREということになる。CREに感染すると肺炎などで死亡率は40~50%に達する。
ただし、CREもほかの2つの耐性菌と同様に健康な人への被害はほとんど心配がない。免疫力が落ちた病人に猛威を振るうのだ。病院を見舞う際には、手洗いと消毒をしっかり行うようにしよう。また、家族が感染した場合には、患者の便などの処理には手袋を使おう。