厚労省、NHKガッテン「糖尿病治療」を問題視 専門学会も「許されない」抗議文

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   NHKの生活情報番組「ガッテン!」が、ある特定の睡眠薬を飲むことで「糖尿病が治療できる」などといった特集を放送した問題をめぐり、厚生労働省が「国民の健康に大きな影響が出る懸念がある」としてNHKを注意していたことが分かった。

   厚労省医薬・生活衛生局の担当者が2017年2月27日、J-CASTニュースの取材に明かした。そのほか、問題の放送については、日本睡眠学会と日本神経精神薬理学会も「看過できない問題点が確認された」として、番組内容に抗議する趣旨の文書を同日に公表している。

  • 番組テロップでは「睡眠薬で糖尿病が治療できる」とうたっていた(画像は放送より)
    番組テロップでは「睡眠薬で糖尿病が治療できる」とうたっていた(画像は放送より)
  • 番組テロップでは「睡眠薬で糖尿病が治療できる」とうたっていた(画像は放送より)

「国民の健康に大きな影響が出る」として口頭注意

   問題となったのは、2月22日に放送された「血糖値を下げる!デルタパワーの謎」と題した特集だ。番組では、糖尿病患者がある特定の睡眠薬を飲むことで、安全に血糖値を下げることができるなどと説明。テロップでは「睡眠薬で糖尿病が治療できる」とも説明していた。

   放送後、医療関係者を中心に番組内容を問題視する声が出たことを受け、NHKは26日夜に公式サイト上に謝罪文を掲載。放送について「行き過ぎた表現や短絡的な表記」があったことを認め、

「あたかも睡眠薬を糖尿病の治療や予防に、直接使えるかのような誤解を与えてしまいました」

として視聴者や医療関係者に謝罪していた。

   厚労省医薬・生活衛生局の監視指導麻薬対策課の担当者は2月27日のJ-CASTニュースの取材に、

「NHKに対しては24日までに、放送内容に対する注意を口頭で行いました」

と明かす。その理由については、放送を受けて睡眠薬の処方を希望する患者が出るなど医療現場に混乱が出ていることから、「国民の健康に大きな影響が出る懸念があったため」だと説明した。

   なお、26日夜にNHKが公開した謝罪文について、担当者は「こちらからの注意喚起を受け、適切に訂正・謝罪を行って頂いたものと考えている」。ただ、今後もNHKをはじめメディアの医療や薬品に関する報道姿勢については「変わらず注視していきたい」とも話していた。

睡眠学会「医療現場での混乱を招いています」

   また、日本睡眠学会と日本神経精神薬理学会も27日になって、「ガッテン!」の放送内容に抗議する文書を理事長の署名入りで公表した。その文書は、両学会が連携して作成したもので、文面は同一のものになっている。

   番組では、「血糖値を下げる新薬」だとして、製薬会社のMSD(東京都千代田区)が2014年に発売した「ベルソムラ」という睡眠薬を取り上げていた。両学会は文書の中で、

「国で承認された効能又は効果は『不眠症』に限定されており、糖尿病に対して処方することは認められていません。番組内ではそのような睡眠薬を取り上げ、血糖低下を目的として用いることを推奨しているかのような印象を与えています」

と指摘。さらに、ベルソムラは「既存の臨床試験データにおいても血糖降下作用は確認されていません」として、

「一部の研究者の限られた研究データを根拠として糖尿病治療に用いることは倫理的にも医学的にも許容されません。本番組ではそのような根拠に乏しい効能効果を視聴者に向けて強くアピールしており、糖尿病患者に過大な期待を持たせたばかりか、医療現場での混乱を招いています」

と厳しく非難した。

製薬会社「糖尿病治療薬としての適応はございません」

   なお、26日夜に公表した謝罪文の冒頭でNHKは、問題となった番組の趣旨について「睡眠を改善することで血糖値が下がる」という研究データを紹介するものだったと説明している。

   番組の中では、睡眠の質を向上することで「デルタ波」という血糖値を下げる効果のある脳波が強まるとして、この現象について「デルタパワー」と表現していた。ただ、この点についても、両学会は文章の中で、

「現段階ではデルタパワーと血糖低下作用の関連については医科学的に確立されている とは言えません」

と疑問を呈していた。

   そのほか、ベルソムラを販売しているMSDも27日までに、公式サイト上の「医療関係者向け」ページ上に文章を掲載し、

「弊社の不眠症治療薬であるオレキシン受容体拮抗薬を服用し、熟睡することで糖尿病が改善するという内容の放映がありました。今回の番組はNHKが独自で企画・取材したものであり、MSDからNHKへ情報提供などは行っておりません」

と説明。その上で、「ベルソムラは不眠症治療薬であり、糖尿病治療薬としての適応はございません」と明言している。

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