NHKは2017年2月26日夜、生活情報番組「ガッテン!」の22日の放送で、ある特定の睡眠薬を飲むことで「糖尿病の治療や予防ができる」などと伝えた件について、番組公式サイト上に謝罪文を掲載した。
番組の放送後、医療現場を中心に放送内容を問題視する声が相次いでいた。今回の謝罪文でNHKは「(番組の内容に)行き過ぎた表現があった」ことを認め、「皆様に誤解を与え混乱を招いてしまった」と謝罪している。NHK広報局によれば、28日に予定していた再放送は取り止めるという。
医療現場でも「問題」になっていた
問題となった「ガッテン!」の特集は、「血糖値を下げる!デルタパワーの謎」と題したもの。番組では、ある特定の睡眠薬に焦点を当て、この薬を飲むことで血糖値を下げる効果のある脳波が強まり、糖尿病が治療できるなどと説明していた。
番組に出演していた医師は放送中、紹介した睡眠薬について「新しいので安全性が高い」として、糖尿病患者でも「わりと気軽に飲める」と発言。また、テロップでは「睡眠薬で糖尿病が治療できる」との説明が出ていたほか、番組MCの立川志の輔さんも、
「糖尿病、糖尿病予備軍の方、これで安全に血糖値を下げることができます!」
と明言していた。
このように、特定の睡眠薬の使用を推奨しているような番組の内容について、放送後のツイッターには医療関係者を中心に番組内容を問題視する声が殺到。J-CASTニュースは24日の配信記事でこの問題を取り上げ、複数の専門医に見解を聞いたが、いずれも番組の内容に批判的だった。また、都内のある糖尿病専門医はその際、
「臨床の現場で問題になっている」
として、睡眠薬の処方を希望する患者が増えたことで対応に追われる医療機関が出ていることも指摘していた。
そうした状況の中、NHKは26日夜になって番組公式サイト上に「『最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎』をご覧になった皆様へ」と題した謝罪文を掲載。放送後に多くの指摘を受けたとして、一連の経緯の詳細な説明と謝罪を行っている。
「皆様の誤解や混乱を招き、ご迷惑をおかけしたことを深くお詫びします」
謝罪文の冒頭でNHKは、番組の趣旨について「睡眠を改善することで血糖値が下がる」という研究データを紹介するものだったと説明。しかし、実際の番組では睡眠薬を飲むことで糖尿病が治療できるといった「行き過ぎた表現や短絡的な表記」があったとして、
「あたかも睡眠薬を糖尿病の治療や予防に、直接使えるかのような誤解を与えてしまいました」
と放送内容に問題があったことを認めている。
また、番組中では「副作用の心配が非常になくなっている」などの説明があった。この点について謝罪文では、悪夢や頭痛などの報告例は出ているとして「大変不適切でした」とお詫びしている。
なお、問題となった「ガッテン!」の放送をめぐっては、番組で紹介した睡眠薬をめぐる「ステマ疑惑」も指摘されていた。番組では、製薬会社のMSD(東京都千代田区)が2014年に発売した「ベルソムラ」という特定の睡眠薬を商品名が分かるように取り上げていたことから、
「がっつりベルソムラの宣伝です。監修医はMSDとCOI(編注・利益相反)関係にあるんでしょうか?」
などと疑う書き込みがネット上に数多く出ていた。
この点については、スタジオに出演した医師は別の種類の睡眠薬も紹介していたと説明。続けて、番組では「その内容を十分にお伝えできない編集となってしまいました」として、
「あたかも番組や病院が、この薬だけを推奨しているかのような印象となってしまい、配慮に欠けていました」
と謝罪していた。
NHK広報局は27日のJ-CASTニュースの取材に対し、「説明が不十分で行き過ぎた表現があった。皆様の誤解や混乱を招き、ご迷惑をおかけしたことを深くお詫びします」とコメントした。
2月28日に予定していた再放送も取り止め、別内容に差し替えて放送する。また、3月1日の「ガッテン!」の放送中にも、改めてお詫びと説明をする予定だという。