乳児を乗せたベビーカーを押してエスカレーターを利用する親を目にすることがある。他の利用者からは、「危ないのでやめてほしい」「あれ、本当に怖い」との声があがる。
エスカレーターの関連団体は、ベビーカーを乗せて上り下りしないよう呼びかけているが、「危ないと分かっていても乗ってしまうことがある」と漏らす親もいる。
業界団体「非常に危険」と注意喚起
質問投稿サイト「Yahoo!知恵袋」に2017年2月13日、「ベビーカーに赤ちゃん乗せたままエスカレーターに乗っていいんでしょうか?」との質問が寄せられた。回答者からは「非常識だし迷惑だし危ないのでやめてほしいですね」「事故が起きないことを願います」「全国どこでもエスカレーターにベビーカーのまま乗る非常識な方はいます」と厳しい言葉が並ぶ。ほかにも同様の投稿が複数見つかった。
エスカレーターを含む昇降機事業の業界団体、一般社団法人・日本エレベーター協会では、ベビーカーでのエスカレーター利用について、死亡事故や深刻なけがにつながる恐れがあるとして禁止している。J-CASTヘルスケアの取材に答えた同団体担当者によると、「『禁止』としているが法規ではないので強制力はない」とするものの、ウェブサイトでは次のように注意喚起している。
「ベビーカーのエスカレーターへの乗り入れは非常に危険です。タイヤがうまく乗らずにバランスを崩しますと、重さを支えきれずに転倒する恐れがあります。お子様を危険な状況にさらすことになりますので、絶対にしないで下さい」
その上で担当者は「『自分は大丈夫だろう』と思ってエスカレーターを使っても、乗降口で溝につまずいたという利用者は少なくありません。エレベーターに乗ってもらうよう啓発しています」と話した。
一方で、母親としては禁止と分かっていながらエスカレーターを使いたくなる場面がある。東京都内在住の40代女性は取材に対し、「ベビーカーを押していれば基本的にはエレベーターを使うけど、駅でエレベーターに人が並んでいる時や、エレベーターがホームの端の遠い場所にある時は、申し訳なく思いながらやむなくエスカレーターを使ってしまいます」と打ち明けた。前出の「Yahoo!知恵袋」の投稿の中にも、「私も乗せますね。ただ禁止されてます。でも混んでるとことかだとエレベーターはめんどくさいです」との回答があった。
駅員に頼めば運搬を手伝ってくれる
公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団が2013年10月~14年3月に実施した「ベビーカー利用者に関する実態調査」によると、鉄道30社のうち「エスカレーターの利用を禁止しているが、利用者が多く黙認せざるを得ない」との回答が16.7%あった。
前出の40代母親は、「駅では他のお客さんや駅員がベビーカーを持って階段を運んでくれる時もある。階段の側に『困りごとがあればお声掛けください』といった貼り紙や、駅員呼び出し用のインターホンが設置されている駅もありますよ」と言う。その場合は自分が子どもを抱きかかえて階段を利用し、ベビーカーは駅員に頼んで運んでもらう。「荷物もあるので、自分1人でベビーカーと子どもの両方を持ち上げて階段を上り下りするのは難しい」と話した。
例えば東京急行電鉄では、ベビーカーで駅構内を快適に利用できるよう配慮している。J-CASTヘルスケアが同社広報担当者に取材すると、バリアフリー化を進めるなかで、「すでにエレベーターが設置されていても、利用者の多さから増設を予定している駅がいくつかある」と説明した。
東急ではエレベーター以外にも、「駅員を呼び出せるインターホンをホームやトイレに設置しております。フロアの昇降でベビーカーを運べない場合を含め、困ったことがあればどなたでも気兼ねなく押していただきたい」と呼びかける。駅員の側からも「階段の近くでベビーカーを押す人がいれば、声をかけて手伝います」。かつては「階段昇降機」という、階段の端に設置して自動で上り下りするレール付きのボードが設置されている駅もあったが現在は無く、「基本的にはエレベーターをはじめとしたバリアフリー設備を利用してもらい、駅員が呼ばれたり困っているお客様を見かけたりした場合は、駅員が直接対応しています」と話した。