「安倍首相の対トランプ外交はホールインワン」
一方、英BBCは、「安倍首相の対トランプ外交はホールインワン」という見出しで、安倍氏の戦略を評価した。
「安倍氏は、トランプ氏を怒らせずに教育することに成功した」とし、「時に毅然とした態度で、しかも敬意を払いながら、関係を注意深く築いた」ことを専門家の声を交えて紹介。「トランプ新政権とどう向き合っていくか見定めるうえで、各国の首脳や外交官は、安倍氏を手本にできるかもしれない」と好意的に評価した。
産経新聞によると、2016年11月の初会談で安倍氏が、「あなたはニューヨーク・タイムズ(NYT)に徹底的にたたかれた。私もNYTと提携している朝日新聞に徹底的にたたかれた。だが、私は勝った」と話すと、トランプ氏は右手の親指を立てて、「俺も勝った」と答えたという。
これが安倍氏との心の距離を一気に縮め、buddy(仲間)としてハグしたくなるほどの気持ちにさせたのかもしれない。
しかし、安倍首相がうまく主導権を握ったように見えながら、じつはこれまで以上の追従を迫られる可能性を危惧する声もある。
トランプ政権には、予想不可能な要素が多い。米国の内外で、新政権に対する批判も強い。
蜜月関係のアピール後、激動の国際政治の舞台で日米が孤立することなく、実際にどのように協同歩調を取っていくのか。安倍首相の手腕が問われるのは、これからだ。(随時掲載)
++ 岡田光世プロフィール
岡田光世(おかだ みつよ) 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計35万部を超え、2016年12月にシリーズ第7弾となる「ニューヨークの魔法の約束」を出版した。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。