ビール類の国内シェアで「万年4位」が定着しているサッポロビールがじわり復活している。主力ビールの「黒ラベル」や「ヱビス(エビス)」が好調で、2016年の年間シェアは前年比0.2ポイント上昇し、12.0%に伸びた。
ただ、経営の大きな柱が依然、不動産事業であることに変わりはない。祖業のビールをさらに伸ばし、「不動産のサッポロ」を脱却する日は来るのか。
経常利益は過去最高
「『ビール強化元年』の趨勢を作ることができた」。サッポロホールディングス(HD)の上條努会長は2017年2月13日、16年12月期連結決算の発表記者会見で胸を張った。
2016年は事業方針として主力のビールの強化を掲げ、スタンダード商品の「サッポロ生ビール黒ラベル」と高価格帯商品の「エビスビール」に注力。この結果、黒ラベルの売上数量は前年比3%増、エビスも2%増となり、市場が縮小する中、国内酒類事業は前期比2%の増収を確保した。経常利益は45%増の192億円と過去最高を記録し、純利益も55%増の94億円と好調だった。
2008年にサントリービールに抜かれて国内4位に転落して以来、シェアの拡大はサッポロの悲願だ。2016年のシェアはアサヒビールが前年比0.8ポイント増の39.0%と7年連続で首位をキープ。2位のキリンは1.0ポイント減の32.4%と苦戦し、3位のサントリーは15.7%と横ばいだった。サッポロは2~3位陣営のもたつきをチャンスとばかりに、攻勢を強めている。
2017年1月1日付でサッポロHD社長に就いた尾賀真城社長は、16年11月の記者会見で「シェアは今の順位に満足していない」「攻めることで結果はついてくる」と述べており、ビール好調の今の流れを勢いづかせたい考えだ。
「ビール復権宣言」を17年のスローガンを設定し、引き続き主力ブランドを強化。黒ラベルは1.0%増の販売を計画する一方、エビスは女性向け新商品の投入などで、10.1%増と2ケタ増の強気の目標を掲げる。
若者の間でもビール回帰の動き
強気の背景には、じり貧が続いてきたビール市場の復調がある。節約志向が続く中、低価格の第三のビールなどの需要は依然強いが、作り手の個性を前面に出した「クラフトビール」がブームとなるなど、ビール離れが指摘されていた若者の間でもビール回帰の動きが出てきた。
また、2017年度税制改正大綱には、第三のビールや発泡酒より高かったビールの酒税が減税される方針が明記された。減税でビールの販売価格が下がれば、ビール回帰はより進むとみられている。サッポロはこうした点も追い風に、シェアを拡大する作戦だ。
だが、ビール好調とはいえ、なお業績を下支えしているのは、工場跡地などを活用した不動産事業だという構図に大きな変化はない。2016年12月期は複合施設「恵比寿ガーデンプレイス」の賃料収入が増えたことなどから、同事業の営業利益は前期比24%増の103億円と絶好調。全体の営業利益202億円の半分近くを占め、国内酒類事業(営業利益117億円)と並ぶ「稼ぎ頭」だ。2017年は、東京・銀座4丁目交差点の旧サッポロ銀座ビルを再開発して2016年9月にオープンした商業ビル「GINZA PLACE(銀座プレイス)」が年間を通じてフル稼働するため、業績へのさらなる貢献が期待されている。
もっとも、銀座プレイスの開業で再開発案件は山を越え、不動産事業は今後も安定的な収益を稼ぎ出すものの、どんどん拡大していけるわけではない。持続的な成長には、やはり本業のビールの立て直しが急務と言える。現在の勢いを持続し、「万年シェア4位」を返上できるのか。サッポロの真価が問われそうだ。