金融緩和で利回りの高い電力債は魅力
実は社債という意味では、東電(現在の東電HD)は私募による社債を発行している。2012年には7264億円に上る巨額の私募債を発行した。下記のURLは東電のホームページにある社債の発行状況だが、これを見ればわかるように2012年以降、毎年のように、私募による社債は発行してきているのだ。
http://www.tepco.co.jp/corporateinfo/illustrated/investment/bonds-issued-j.html
ただし、私募債の引受手(購入者)は、ほとんどが東電の取引金融機関、融資を受けている金融機関ということになる。12年の7264億円の私募債は、メインバンクからの融資に対する事実上の担保として発行されたものだった。換言すれば、公募債としての社債を発行する信用力はないが、融資を受ける際の担保として社債はその役割を果たしてきたということだろう。
東京電力パワーグリッドは2月15日、関東財務局に2件の社債発行に関する有価証券届出書を提出した。3月中にも、3年債を300億円、5年債を400億円発行する計画だ。この公募社債発行の背景には、東電HDとは別の法人格である東京電力パワーグリッドが発行することで、「原発リスク」を回避できることに加え、もうひとつの大きな要因がある。それは、日銀の強力な金融緩和政策による国内機関投資家の運用難だ。
ある地銀大手行の資金運用担当者は、「東京電力パワーグリッドが発行するとはいえ、電力債であることに変わりはない。電力債は原発リスクという潜在的なリスクから、他の業種の社債よりも利回りが高くなるため、資金運用に苦しむ国内機関投資家にとっては、十分に魅力のあるものだろう」という。
つまり、日銀の金融緩和政策が、東電にとっては、公募社債という資金調達を再開するための強力な援軍となったということになる。