自転車の後ろに小さな子を乗せている際、子ども特有のある事故に気をつけるよう、政府機関などが盛んに呼びかけている。
「スポーク外傷」といわれる事故で、自転車の後ろに乗った子の足が車輪に巻き込まれて負うけがを指す。足を挟む程度と侮るなかれ、実はかなり重症になることもある怖い事故だ。
縫合が必要、深く切断のケースも
スポークとは、自転車の車輪の中心部から車輪の枠(リム)に放射状に延びている針金状の部品のことだ。スポーク外傷は、後輪のスポーク部分に、自転車の後部荷台や幼児座席に乗っている子どもの足が巻き込まれることで生じる。
2016年8~9月にかけて消費者庁や国民生活センターが注意喚起を発表していたが、2017年2月20日は政府広報で改めて注意が促されている。
国民生活センターの発表によると、2010~2015年の間に172件の報告があり、そのうち90件が6歳未満の事故だった。この件数は、同センターや消費者庁に報告する事業に参加している医療機関30か所からのものに限られ、実際にはさらに多いと推測される。
報告のあった事例は、多くが軽いすり傷を負った程度で済んでいるようだが、中には足の甲やかかと、アキレス腱にかけて広く皮膚が削げて縫合が必要な重度のけがや、足の組織を深く切断してしまったというものも見られる。
「かかとがスッパリと切れて、プラプラとかろうじてつながっているような状態で...」
5歳の頃、父親の自転車の後部荷台に乗っていてスポーク外傷を負ったという30代の女性は、J-CASTヘルスケアの取材にこう答えた。
「坂道を下っているときで父親が気づくのに遅れてしまい、余計にけががひどくなってしまいました。総合病院で24針も縫って、なんとか(かかとが)つながりましたが、今でも跡がはっきり残っています」
自分の妹が小さい頃にかかとを切断してしまったという50代の男性は、「縫い合わせることができず、結局おしりの皮膚の一部を移植することになりました」と話す。
幼児座席に6歳以上は厳禁
政府広報によると、スポーク外傷が起きやすい状況は、「幼児座席を取り付けず、後部荷台に直接座っている」と、「幼児座席を取り付けているが、足置きに足を置いていない」のふたつだ。
前者の場合、当然だが足が車輪に近づきやすく、スポークに巻き込まれる危険が高まる。「ドレスガード」という、自転車に乗っている人の衣類が絡まるのを防ぐためのカバーがついていることもあるが、構造・材質的に幼児座席の代替品にはならない。国民生活センターは「ドレスガードを備えていても、幼児座席がない自転車に子どもを同乗させてはいけません」とウェブサイト上で強く警告している。
では、幼児座席を取り付けていても巻き込まれる事例があるのはなぜか。国民生活センターの実験によると、6歳以上の子どもが乗ると足乗せ部から足がはみ出るなど、車輪に巻き込まれる可能性が高くなることがわかっている。道路交通法によって幼児座席に座ってよいのは6歳未満までと定められており、幼児座席も6歳未満の子どもの体格までしか対応していないのだ。幼児座席メーカーのウェブサイトでも、適用年齢を守らなければ重大な事故の可能性があると注意や警告が記載されている。
もちろん、6歳未満が使用する分には心配ない。幼児座席には足の部分を覆うようにカバーが取り付けられており、「SGマーク」がついた安全基準を満たした幼児座席を、販売店で適切に取り付けたうえで正しく座れば問題はないと政府広報も報告している。