「アイコス」などの加熱式タバコが人気を集めている。煙が出ずに周囲に迷惑をかけないことがヒットの秘密だが、幼児が誤飲する事故が増えている。
紙巻タバコと違って副流煙が出ない利点がアダになり、家の中で吸う親が多いからだ。日本小児科学会や日本禁煙学会の専門医らが、それぞれのウェブサイトやツイッターで注意を呼びかけている。
母親が起きた時に赤ちゃんがクチャクチャ
加熱式タバコは、刻んだタバコの葉をヒートスティックに詰め、電気で熱を加え発生した蒸気を吸い込むもの。煙が出ないうえ、ニコチン量も少ないというふれこみが人気となり、日本では2015年から本格的に発売された。日本小児科学会は2017年2月、幼児の誤飲事故の事例をウェブサイト「Injury Alert」(傷害速報)に公表した。「傷害速報」は子どもの安全を脅かす事故について、保護者や医師に注意喚起するものだ。今回公表された誤飲事故は次の2つだ。
【事例1】年齢・性別は9か月男児。場所は自宅リビング。
男児は父母と3人暮らし。父親が喫煙者で、男児の誕生を機に紙巻きタバコから加熱式タバコに変えた。事故発生時、男児の手が届くテレビ台の上(高さ約40センチ)に加熱式タバコのスティックの入った箱が、封の開いた状態で置いてあった。スティックの中には刻んだ葉が詰め込まれていた。
午後1時頃、母親が男児の異常に気づき、口をこじあけると、スティックのフィルターだけが口の中に残った状態だった。周囲にタバコの葉などは見当たらず、スティック一本すべてを男児が食べたと思われた。実は1か月前にも同様の事故があったが、その時はスティックが折れ、タバコの葉は床に落ちてフィルターだけが口の中にあった。
すぐに救急外来を受診したが、誤飲して1時間が経っており、顔色が悪かった。担当医は輸液を開始し、生理食塩水で胃洗浄を行った。胃洗浄で中等量のタバコの葉を回収できた。加熱式タバコの販売元に成分を確認したが、明確な回答は得られなかった。そこで紙タバコ1本分を誤飲したものと考え、入院させて様子を観察した。状態の悪化が認められず、翌日に退院したが、2回目であることから、地域の保健師の指導・介入が予定されている。
【事例2】11か月男児。帰省先の実家の居間。
午前6時に母親が目を覚ました時は、男児はすでに起きていた。口をクチャクチャさせており、周囲に噛(か)みちぎったスティックが2本分落ちていた。すぐに口の中のものをかき出し、救急外来を受診した。男児は病院では1回おう吐した。
スティックは父親のもので、封を切った状態で50センチの高さの棚の上に置いてあった。口の中からタバコ葉の塊が約8センチ出てきたが、誤飲した正確な量は不明であった。幸い、血圧、心拍数などに異常はなかった。1日入院し、翌日午前10時まで観察したが、状態に変化をみられなかったため帰宅した。担当医がニコチンの含有量を調べたが、明確にすることができなかった。