えっ、入れ墨OKの入浴施設がある? 銭湯と日帰り温泉ではルール違う

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   日本を訪れる外国人旅行者が増加し、2020年には東京五輪が控えるなか、「入れ墨と入浴施設」がしばしば話題になる。タトゥーをしている外国人が旅行で温泉を訪れても、入浴を断られるのではないか、というのだ。

   しかし、入れ墨の人の入浴可否について調べてみると、インターネット上では「銭湯では入れ墨やタトゥーでも断られない」という情報をよく見かける。入浴施設によって「ルール」が違うのだろうか。実態を取材した。

  • どうしても広いお風呂に行きたい場合は銭湯、ということに
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「一般公衆浴場」と「その他公衆浴場」

   政府は2017年2月21日の定例閣議で、公衆浴場の経営を規定する「公衆浴場法」によって、入れ墨などを入れた人の利用が制限されることはないとすると答弁書を決定した。

   実は公衆浴場の区分は、都道府県が定める「公衆浴場条例」で規定されている。それは「一般公衆浴場(あるいは普通公衆浴場)」と「その他公衆浴場」のふたつに分かれる。

   一般公衆浴場はいわゆる町の銭湯で、公営の共同浴場もこの区分だ。その他公衆浴場にはスーパー銭湯や日帰り温泉、健康ランド、サウナ、スポーツクラブの付属風呂からソープランドまで幅広い浴場が含まれる。

   J-CASTヘルスケアが、銭湯の業界団体である全国浴場組合に「入れ墨があっても入浴が断られることはないのか」と取材したところ、「断りませんし、組合として禁止ルールなども設けていません。そういった貼り紙などを出すことも推奨していません」との回答だった。

   これに対して、スーパー銭湯や日帰り温泉など「その他公衆浴場」の業界団体・温浴振興協会に聞くと、「各浴場によって対応は異なります」との答えが返ってきた。

   同じ一般公衆浴場でも対応が違うのは、「銭湯が公衆衛生の維持を目的にできた浴場なのに対し、『その他(温泉施設)』に分類される浴場は完全に営利目的だからです」。

   温浴振興協会の担当者によると、一般公衆浴場は入浴料に上限が設けられ、自治体から下水道料金の減免といった措置を受けており、公衆衛生上必要な施設と位置付けられている。つまり、感染しやすい病気にかかっている、極端に汚いなど、他の入浴者の健康状態に直接的な影響を及ぼす可能性のない入れ墨は、入浴を断ることはできない。

   組合に所属していない銭湯が独自に入浴拒否をすることもあるようだが、それらは珍しい例と思われる。

多くの客は今も「入れ墨の人は来ないでほしい」

   一方、スーパー銭湯など「その他公衆浴場」が入れ墨を理由に入浴を断っていた理由は、暴力団対策だったと温浴振興協会の担当者は話す。今は取締りが厳しくなり、入れ墨のある暴力団員が来店するケースはほとんどなくなったが、利用者はいまだに「入れ墨お断り」を強く求めているという。

「お客さまにアンケートを取ると『入れ墨やタトゥーの人は来ないでほしい』という声が多く、営利企業としてはその意見を無視できないのが現状です」

   最近ではファッションとして入れ墨やタトゥーを入る人が珍しくない。だが、拒否感を持っている人にとっては入れ墨に変わりはない。理解を求めるのは容易ではなく、各浴場も対応に苦慮しているようだ。

   現在、温浴振興協会では入れ墨を隠せるようなシールを開発しているが、皮膚に貼りつけるシールは絆創膏になるため、そのまま入浴するには保健所の指導を受ける必要があり、実際に運用可能かは不透明だ。どの程度のサイズにするかといった点もまだ決まっておらず、解決法の模索が続いている。

   なお、旅館やホテルの温泉の場合、法的には公衆浴場の対象外となっている。入れ墨の客の入浴を認めるかどうかは、旅館業法のもと各宿泊施設の判断に任されている。

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