「困った時はコレを食え」といわれるブロッコリーは、多くの栄養素を含む「最強の野菜」だが、また新たな健康効果があることがわかった。
金沢大学の太田嗣人准教授とカゴメの合同研究チームが、ブロッコリーの新芽(ブロッコリースプラウト)に含まれている成分に肥満抑制の働きがあることを突きとめ、米国糖尿病学会誌「Diabetes」(電子版)の2017年2月17日号に発表した。
新芽に含まれる万能成分「スルフォラファン」
この成分は「スルフォラファン」というフィトケミカル(植物由来成分)だ。ブロッコリースプラウトには「親」より20倍以上多く含まれている。抗酸化力・抗菌力が非常に強く、これまでの研究では次のような効果が期待できるといわれてきた。
(1)肝機能の向上。肝臓は有害物質の解毒を行う臓器だが、スルフォラファンには体内の解毒酵素を活性化させる働きがある。
(2)胃がん予防。ピロリ菌は胃酸の中でも繁殖して胃潰瘍や胃がんの原因となる。スルフォラファンの強力な抗菌作用がピロリ菌の繁殖を抑える。
(3)自閉症の行動改善。米ハーバード大の研究グループが自閉症の男性29人にスルフォラファンを18週間摂取させると、社会行動や言葉のコミュニケーションに改善が見られた。摂取をやめると元に戻った。
(4)花粉症の改善。花粉症は体内に「イムノグロブリンE」(IgE)という抗体が多くなると発症する。スルフォラファンはIgEの発生を抑制する。
金沢大学の2月17日付発表資料によると、太田准教授らはマウスを2つのループに分け、一方には脂肪分の高いエサにスルフォラファンを混ぜたものを、もう一方には脂肪分の高いエサだけをそれぞれ14週間与える実験を行なった。マウスが毎日摂ったスルフォラファンの量は、人間の体重に換算すると、市販のブロッコリースプラウト1パック(50~100グラム)ほどに含まれる量に相当する。その結果、スルフォラファンを与えたマウスは、与えていないマウスに比べて体重の増加率が約15%抑えられ、内臓脂肪量が約20%減少した。
脂肪を燃焼し、悪玉の「肥満型腸内細菌」を減らす
そして、スルフォラファンに次の2つの作用があることを発見した。
(1)スルフォラファンには中性脂肪を燃焼させ、エネルギー消費を増やす働きがある。
(2)高脂肪食をとると、悪玉の「肥満型腸内細菌」が増え「内毒素」と呼ばれる有害物質を出す。「内毒素」は血液の中に漏れて肝臓に侵入する。そして炎症を引き起こし糖尿病などの生活習慣病の原因となる。スルフォラファンは「肥満型腸内細菌」を減らし腸内の環境を改善する。
今回の研究の成果について、太田嗣人准教授は、J-CASTヘルスケアの取材にこう語った。
「スルフォラファンの肝臓の解毒効果や抗がん効果は知られていましたが、肥満の抑制と腸内環境を整える効果はまったく新しい発見です。現実には、スルフォラファンを摂るために、ブロッコリースプラウトを毎日1~2パック食べるのは難しいので、サプリでとることになります。効率的に摂れるサプリの研究を進めたい。また、今回の研究は肥満の予防でしたが、すでに肥満している人にも効果があるのか、肥満したマウスを使って実験し、肥満の治療薬の開発を目指します」
生のままよくかんで食べるのがコツ
さて、このスルフォラファンの健康効果を生かすためには、ブロッコリースプラウトはどうやって食べればいいだろうか。ブロッコリースプラウトを生産・販売している「村上農園」によると、基本的に生でよくかんで食べるのがいいようだ。ウェブサイト「ブロッコリースプラウトの効果的な食べ方」にはこう書いてある(要約抜粋)。
「食べ方に2つのポイントがあります。抗酸化力で知られるビタミンCは摂取して数時間で効力を失ってしまうため、毎日摂取する必要があります。しかし、スルフォラファンによって生成された解毒酵素の働きは、約3日間続きます。『3日に1度』と覚えましょう」
「スルフォラファンは植物の細胞内では『グルコラファニン』という前駆体として存在しています。これをよくかみ砕くと、人間の体の中でスルフォラファンに変化するのです。また、熱に弱いので、ブロッコリースプラウトを加熱せず生のままよくかんで食べるのが効果的です」
「ジュースやスムージーに加えると、細胞がしっかり壊されて、より効果的にスルフォラファンを摂ることができます。ただし、スルフォラファンは揮発しやすいので、作りたてのフレッシュなものをいただきましょう」