「東京流れ者」や「けんかえれじい」、「ツィゴイネルワイゼン」などの作品で人気を集め、「清順美学」と呼ばれた独特の映像美で映画青年たちに熱狂的に支持された映画監督の鈴木清順(本名・清太郎)さんが、2017年2月13日に死去していたことが22日、明らかになった。
晩年は俳優として、後輩の監督作品などに登場することもあった。NHKの元アナウンサー鈴木健二さんは実弟。
「東京流れ者」「ツィゴイネルワイゼン」
1923年、東京生まれ。旧制弘前高校(現弘前大学)に進み、学徒出陣でフィリピン、台湾を転戦し、陸軍大尉で終戦を迎える。復員後、東大受験に失敗し、映画製作の世界へ。
59年、赤木圭一郎のデビュー作「素っ裸の年齢」、63年には小林旭出演の「関東の無宿」、64年、野川由美子出演の「肉体の門」、66年には渡哲也出演の「東京流れ者」、高橋英樹出演の「けんかえれじい」など、主に青春スターを主役に、アウトロー的な雰囲気に満ちたヒット作を連発した。大半の作品に美術監督として木村威夫が関わっており、二人のセンスがモダンで新鮮な色彩感覚と、テンポのよい映像リズムを作り出し、「清順美学」と称された。
68年、所属していた日活首脳部と対立、フィルム貸出を拒否され、解雇。これに抗議したファンや映画関係者は「鈴木清順問題共闘会議」を結成、デモを行うなど、一時は社会問題に発展した。
77年、「悲愁物語」でカムバック。80年「ツィゴイネルワイゼン」でキネマ旬報ベストワン、日本アカデミー賞最優秀賞作品賞及び監督賞を獲得。ベルリン国際映画祭審査員特別賞を受賞するなど、国際的にも高く評価された。翌年の「陽炎座」もキネマ旬報ベストテン3位に入賞した。84年にはアニメ「ルパン三世」の劇場版「ルパン三世 バビロンの黄金伝説」も監督した。
90年の「夢二」で、「ツィゴイネルワイゼン」「陽炎座」と続く大正三部作が完成。2001年、10年ぶりに撮った「ピストルオペラ」はヴェネツィア国際映画祭で「偉大なる巨匠に捧げるオマージュの盾」を受賞。05年の大作「オペレッタ狸御殿」は、カンヌ国際映画祭で栄誉上映特別招待作品として招待された。
俳優として後輩作品に特別出演も
後輩監督の中には大森一樹監督など、鈴木さんを敬愛する人が多く、作品に鈴木さんを俳優として起用することがあった。大森監督は「暗くなるまで待てない!」「ヒポクラテスたち」に「特別出演」させた。その後も鈴木さんは「ミロクローゼ」「ムー一族」「美少女仮面ポワトリン」「みちしるべ」「ひまわり」「不夜城」など多数の映画やテレビに出演している。
ツイッターでは、
「もっとこの人の映画が見たかった」
「日本映画界から巨匠がまた消えた」
「鈴木清順さん、多くの刺激的な作品をありがとうございました」
といった追悼の声が複数挙がっている。
また、ファンからは
「鈴木清順と言えば『殺しの烙印』」
「ミロクローゼの愛嬌あるクスっするお芝居忘れません!!」
「鈴木清順監督はルパン三世も何本か担当されてて、なかでも映画『バビロンの黄金伝説』がすごいので、機会があったらぜひ見てください。御冥福をお祈りします」
と、それぞれの思い出深い作品名が多数寄せられている。