虫歯の原因となる「ミュータンス菌」が脳出血を引き起こし、認知症の原因となっている可能性があることが京都府立医科大学の研究でわかった。研究成果は英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」(電子版)の2016年12月9日号に発表された。
研究チームは「日常の歯磨きが重要。口の中をキレイにすることで認知症予防が期待できる」という。正しく歯を磨くにはどうしたらよいのだろうか。
虫歯菌を持つ人は脳出血のリスクが14倍に
京都府立医科大学の2017年2月9日付発表資料によると、認知機能が低下する原因の1つに脳内の微少な出血がある。この出血は、虫歯菌の1種の「ミュータンス菌」を持っている人に多いことが従来の研究でわかっている。血液中にある血小板は、傷口に集まって出血を止める働きがあるが、「ミュータンス菌」は血小板の止血作用を阻害する遺伝子を持っている。そして脳の血管の壁にくっついて炎症を起こし、出血させてしまう。
今回、「ミュータンス菌」と脳出血の関連を調べるために脳に疾患のない54~89歳の男女279人の唾液を調べた。その結果、71人(25%)から「ミュータンス菌」が見つかった。また、脳MRI(磁気共鳴画像)で脳内の微小な出血を調べると、「ミュータンス菌」を持っている人ほど脳出血が多く、「ミュータンス菌」のない人に比べ、出血するリスクは14.3倍も高かった。
また、全員に1分間で「か」で始まる言葉をいくつ言えるかの認知機能テストを行なうと、「ミュータンス菌」のない人は平均10.1個言えたが、持っている人は8.9個だった。ほかの言葉でも同様の傾向だった。
研究チームの渡邊功助教らは発表資料の中で、「一般の人の4人に1人がミュータンス菌を持っています。保菌している人は日頃からしっかり歯を磨き、口腔ケアを心がければ、将来の脳卒中や認知機能低下を防ぐ可能性が高まります」とコメントしている。