スキがあったため、我慢できずに?
このことを受けて、埼玉県警では、2月18日に容疑者の男を麻薬取締法違反(所持)の疑いで逮捕し、20日にさいたま地検に送検して報道発表した。男については、捜査を続けている。
男は、警察が駆け付けたときに、意識がもうろうとした状態だったが、薬物銃器対策課では、それは手術後に病院内でもう一度、麻薬を打っていたためではないかとみている。注射器をカバンにしまって病院内のトイレに持ち出して使った形跡があり、このときはフェンタニルの方だったらしい。
犯行の動機については、男は、「ストレス解消のためにやった」と供述しており、「今まで20回くらい抜き取った」とも話していたという。非常勤麻酔医の仕事は、医師不足から高い報酬が得られる反面、緊急に呼ばれたり麻酔の扱いに神経を使ったり重労働だとされる。過去の事件では、仕事のほか家族のストレスも動機に挙げられていたが、今回については、まだよく分かっていないという。
手術中にまで麻薬を使っていた理由については、スキがあったため、我慢できずにしてしまった可能性があるというが、今後男から詳しく事情を聴くことにしている。
医療用麻薬の扱いについて、ある総合病院の事務長は、取材にこう話す。
「普段は金庫で厳重に管理しており、使わない分や捨てる分も記録にしています。しかし、麻酔医は、職人みたいな存在ですので、使う量や種類はまちまちで、よほどおかしくないとそれだけでは抜き取ったか分かりません。手術では、6、7人の医師や看護師が立ち合いますが、抜き取ったかは横に張り付いてでもいないと見つけるのは難しいですね。もともと医療現場は、信頼関係で成り立っているという面もありますし」