大ヒット中のアニメ映画「この世界の片隅に」の未完成版が、青森県の映画館で約1か月半に渡り上映されていた。
配給会社の東京テアトルは2017年2月17日、公式HP上で謝罪文を掲載し、完成版の無料鑑賞や、返金などの対策を取ると発表した。未完成版の上映は1館だけだとしているが、どうしてこんな珍事が起きてしまったのだろうか。
最初の2週間は「完成版」を上映していた
未完成版の上映を行ったのは青森市にある「青森シネマディクト」。J-CASTニュースが2月21日に東京テアトルに取材したところ、「事件」のあらましはこんな具合だった。
まず、多くの上映館に対しては、上映するための素材を基本的に2つセットで届けている。通常ならこの2つは同じ完成版のもので、16年12月17日からそのうちの1つを使って上映していた。すると音声不良が起り、12月30日からもう一つの素材に変えて上映したが、それが未完成版だった。
アニメ映画は完成途中で上映素材を作り、それを鑑賞して修正箇所を見つけるという作業を行う。その途中の素材が東京テアトル側のミスによって完成版に紛れ込んでしまった。ただし、完成版に近いものだったため、それに気が付かず2月14日まで上映し続けた。発覚は片渕須直監督のツイッター上だった。完成版を何度も鑑賞したという人物が14日、片渕監督のツイッターに「違うバージョンもあるのはなぜですか?」と質問し、それがテアトル側に伝わり、確認後その日のうちに完成版での上映に変更した。
未完成版と完成版の違いは、クラウドファンディングに参加した人たちの名前がエンドロールで流れる際、ある登場人物の半生を描く箇所や、遊郭で遊女たちが放つ香りの表現などの部分にあった。