「ウコンに薬効なし」騒動の顛末 専門家指摘も「誤報」拡散され...

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   お酒を飲む前に、二日酔い対策としてウコンエキスドリンクを飲んだことがある人はいるだろう。だが2017年1月末、一部のインターネットニュースが「ウコンの効果を否定する論文が発表された」と報じ、騒ぎになった。

   ところが専門家がこの論文を確認し、「ウコンに効果はなかった」と報じたメディアの方が間違っていると指摘。SNS上で論文の本来の意図を説明するなど情報の訂正を呼びかけていたが、2月21日15時現在でも「誤報記事」は残ったままだ。

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「ウコンの効果」について書いていない

   一部ネットニュースが「ウコンに含まれるクルクミンに薬効(医薬品としての効果)は期待できないとする論文が発表された」とする記事を掲載すると、これを信じた人がツイッターなどで拡散した。

   しかし、創薬メーカーでの勤務経験があるというツイッターユーザーが、「英語論文タイトルに一言も『ウコンに薬効がない』と記載はなく、むしろ『天然ウコンの抽出物が、人間の健康に有益な効果を及ぼす可能性を否定するものではない』と結び真逆の結論だ」と、記事が誤っていることを指摘した。

   すると、記事を掲載していたニュースサイトのひとつが、薬科大学に在籍する研究者らに取材を行い、ウコン(クルクミン)に薬効がないとする表現は不正確だったとして記事を訂正した。しかし、訂正前の記事に基づく情報がまとめサイトなどに転載され続け、一部は「ウコン(クルクミン)を飲んだり食べたりしても効果はない」という内容に変化している。誤りを訂正せず、そのままにしているサイトもある。

   元になった論文は「The Essential Medicinal Chemistry of Curcumin.」というタイトルで、米ミネソタ大学やイリノイ大学、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院の研究者らが医薬品化学分野の学術雑誌に発表した。論文自体は雑誌のウェブサイト上に無料で全文公開されている。

   実際に論文を読んだ医療ジャーナリストの市川衛氏は、「Yahoo!ニュース個人」2017年2月4日付「『ウコンは効かない』ネット騒然の論文を読んでみた」という投稿の中で、「この論文は、ウコンの効果について調べたものではない」と断言し、こう続けている。

「この論文が言いたいのは、これまで信じられてきた『クルクミンは、色々な病気に効果がある万能薬になりうる』という仮説はどうやら違っていたようなので、また新しい仮説を立て、それをひとつひとつ検証していかなければならないのではないか?ということです」

「効果のあり、なしを決めるものではありません」

「今回の論文は、ウコンに含まれるポリフェノール成分のひとつ『クルクミン』の医薬品として利用できる可能性に対して、これまで発表された数々の研究論文を取り上げ、研究者らが見解を示しているレビューです。論文の中にはポジティブなデータとネガティブなデータの両方が紹介されています。人での科学的な根拠を示す結果が出ていないと指摘されていますが、これはクルクミン研究におけるひとつの考え方で、効果のあり、なしを決めるものではありません」

   論文を読んだうえでこう解説したのは、機能性食品研究の専門家でウコンに詳しい愛知学院大学心身科学部・健康栄養学科教授の大澤俊彦氏。医師監修の医療情報サイト「Aging Style」の取材に答えたものだ(記事は2月12日付)。

   さらに大澤氏は、クルクミンにはがんの予防効果が期待できる可能性もあるとしており、

「食品と医薬品の研究はそれぞれ評価が違うものです。私は、機能性食品開発の基盤的な研究を行っていますが、クルクミンには皮膚がんや乳がん、腎臓がんなどに予防作用が期待できるというデータもあります。近年では、クルクミンが代謝されてできる『テトラヒドロクルクミン』という成分の抗酸化力も注目されています」

とコメントしていた。

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