2016年シーズン限りで現役を引退した元広島カープの黒田博樹投手(42)の背番号「15」が永久欠番になったことについて、野球評論家の野村克也さん(82)が雑誌の連載コラムで「ぼやき」を連発した。
黒田投手の永久欠番は、日米通算203勝という通算成績に加え、メジャーからの高額オファーを蹴って古巣・広島に戻った「男気」が評価されたものだ。だが、この決定を知った野村さんは「プロ野球と関わりたくなくなったほどがっかりした」という。
「永久欠番も安っぽくなった」
野村さんが永久欠番に関する「ぼやき」を連発したのは、2017年2月20日発売の月刊誌『本の窓』(小学館)に掲載された連載コラム「野村の日本プロ野球史」だ。
コラムの冒頭、黒田投手の背番号「15」が永久欠番に決まったというニュースを紹介した野村さん。「黒田に対しては何のうらみつらみもない」と前置きした上で、
「このニュースを聞いて、正直、思った。『永久欠番も安っぽくなったなあ......』」
との感想をストレートに綴っている。
そもそも、黒田投手は20年のプロ生活(うち7年はメジャーリーグ)で通算203勝を挙げ、防御率3.51という申し分のない成績を残しているピッチャーだ。さらに、14年のオフには20億円ともいわれるメジャーからの高額オファーを蹴って、古巣・広島と推定年俸約4億円で契約。その「男気ぶり」が称賛を集めた。
実際、共同通信が16年10月31日に配信した記事によれば、広島の松田元(はじめ)オーナーは黒田投手の永久欠番について、
「(黒田投手は)お金だけじゃない価値観というのを今の社会に示した(略)日米通算203勝した投手というだけではなく、彼が与えた影響などが記憶に残るようにしたかった」
と説明したという。
こんな理由で決まった黒田投手の永久欠番に、いったいなぜ野村さんは「がっかりした」「(永久欠番が)安っぽくなった」との不満を連発しているのか。その理由について、野村さんはコラムの中で、
「黒田の功績にケチをつける気は毛頭ない。しかし、彼の背番号が永久欠番になるのなら、ほかになってしかるべき選手がいると思うのだ。その代表がこの私だ」
と説明している。つまりは、自分の背番号が「永久欠番になっていない」ことが納得いかないというのだ。
「永久欠番になりたければ、おれを抜け!」
三冠王獲得をはじめ、従来のキャッチャーの常識を覆す圧倒的な成績を残したほか、日本初の選手兼任監督という役職も務めた野村さん。それだけに、今回のコラムでは、
「私の『19』が永久欠番の候補にすらならなかったのに、どうして黒田程度の成績のピッチャーにその栄誉が与えられるのか......」
と率直な思いを吐露している。
そもそも、プロ野球史上で自身の背番号が永久欠番になった選手は、黒田投手を含めてたった15人だけ。野村さんが指摘するように、黒田選手以上の成績を残していても「永久欠番にならなかった」選手は多い。
三冠王を3度獲得した落合博満さんや他の追随を許さない通算1615盗塁を残した福本豊さん、ピッチャーとして歴代2位の350勝を挙げた米田哲也さんがその筆頭だ。実際、野村さんもコラムの中でこうした選手の名前を挙げつつ、黒田投手の永久欠番について、
「私をはじめ、これまで名前を挙げてきた選手たちの業績は、黒田以下となってしまうではないか」
と嘆いている。
こうした「ぼやき」を連発したコラムの末尾で、野村さんは次のような言葉でコラムを結んでいる。
「永久欠番にするのは、私以上の成績を残した選手だけにせよ!永久欠番になりたければ、おれを抜け!」