「除菌ウエットティッシュ」を使って手や机を拭くときは、「いろいろ菌がついていそうだから、それを取り除きたい」が目的だろう。
しかし、こうした消費者の期待と、実際の除菌効果にはギャップがあるようだ。埼玉県消費生活支援センターが2017年2月10日、ウェブサイト上で公開した「除菌ウエットティッシュの効果をテスト」の調査結果を見てみよう。
業界団体の自主基準しか存在しない
同センターは108人の消費者を対象に、「除菌」の理解度やイメージを調査した。除菌に期待する効果として約73%が「感染症や食中毒の予防」、次いで約46%が「防カビ効果」を挙げている。「除菌によってどの程度の菌が取り除かれると思うか」という質問に対しては、半数近くが「大部分の菌が取り除かれる」と回答しており、ウイルスからカビまで幅広い菌類へ対応できると考えているようだ。
しかし、実は除菌の効果や対象となる菌を定めた公的基準はなく、業界団体の自主基準しか存在しない。ウエットティッシュの業界団体である日本衛生材料工業連合会(日衛連)の自主基準をウェブサイト上で確認すると、除菌対象は「黄色ブドウ球菌」「大腸菌」となっており、ウイルスやカビは対象外だ。
J-CASTヘルスケアが日衛連に取材したところ、
「確かに、会員企業が除菌と商品に表示する場合、第三者機関で『黄色ブドウ球菌』『大腸菌』に限定して、(これらの菌が)対象物から取り除けているかを評価します」
との回答だった。
効果が限定的であるため、メーカー側は商品に「全ての菌を除去するわけではありません」などと表示して対応している。だが、埼玉県消費生活支援センターの担当者はJ-CASTヘルスケアの取材に対し、「消費者の傾向として注意表示をあまり見ておらず、除菌という言葉だけで高い効果を想像する人が多いのではないでしょうか」と話し、こう続けた。
「効果を正しく把握し、上手に使うためにも使用上の注意を確認するなど、商品特徴を理解したうえで使用していただきたいと考えています」
水だけで除菌できる? 業界団体は疑問視
埼玉県消費生活支援センターは、店頭で販売されていた「アルコール入り除菌ウエットティッシュ(4商品)」「ノンアルコール除菌ウエットティッシュ(3商品)」「除菌表示のないウエットティッシュ(3商品)」「水道水を含ませたティッシュペーパー(2商品)」を使い、独自の除菌効果検証テストを実施している。
テストは使用済スポンジから採取した細菌をテーブルに付着させ、3回まで拭き取り、各回で細菌の数がどのように変化したか検査キットで確認するという独自の内容だ。
同センター担当者によると、「除菌に公的な基準がない以上、テスト条件も公的なものはなく、あくまで結果は参考で、条件によって異なる可能性もあります」。そのうえで結果は、3回すべてで「アルコール入りの除菌ウエットティッシュ」の除菌効果が最も高かった。ただし、どの商品も1回では細菌をすべて拭き取ることはできず、3回目の時点で大部分を除去できていた。
「除菌効果は商品に含まれるアルコールなどの効果だけでなく、繰り返し拭くという行為が大きく影響していると推測できます」
それなら、水でぬらしただけのティッシュで拭いても効果が期待できそうな気もする。しかし日衛連に尋ねると、「水拭きだけでは、例えば菌がテーブルの真ん中から隅に寄せられ、検出されにくくなっただけの可能性もあります」と、その除菌効果には疑問を呈した。