カナダ首相とは「熱いハグ」なし
トランプ氏が、最高裁判事に指名したニール・ゴーサッチ氏と握手した時と同様、握手しながら安倍氏の右手の甲を左手で軽くポンポンと叩けば、「まるで子供扱いだ」とし、握手のあとでトランプ氏が報道陣らに礼を言いながら両手の親指を立てれば、「握手合戦に勝ったと誇っているのか」と批判した。
トランプ氏の握手は、「自分が主導権を握り、相手を支配下に置こうとする意識の表れ」と分析する専門家も多い。
その後、トランプ氏は、首脳会談に訪れたカナダのトルドー首相を、同じようにホワイトハウス前で出迎えた。が、熱いハグはなく、握手だけだった。トルドー氏はトランプ氏の肩を素早く左手で掴んで自分の体を固定することで、威圧的な握手攻撃を意図的に交わしたように見える。
会談での握手も数秒間とあっさりしたもので、安倍首相の時とは対照的だった。同氏は、アメリカの政策には干渉しないとした上で、「国民の安全を確保しながら、移民や難民を受け入れる」自国の立場を明らかにした。
政治の上で、握手は強力なコミュニケーション手段と考えられている。安倍氏への「親愛の印」は、何を意味しているのか。答えが出るのは、これからだ。(随時掲載)
++ 岡田光世プロフィール
岡田光世(おかだ みつよ) 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計35万部を超え、2016年12月にシリーズ第7弾となる「ニューヨークの魔法の約束」を出版した。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。