「中長距離の利用が減ったためか、売り上げが減った」の声も
この上限と下限は変更が可能だ。そのブロックの総車両台数の7割を超えるタクシー会社が運賃幅の変更を申請すれば、国交省が審査し、消費者庁と協議して改定することができる。東京都心部は最大手の日本交通はじめ車両数の8割を超えるタクシー会社が初乗り運賃の引き下げを求め、今回の引き下げが実現した。
全国的に初乗りの距離は短くなる傾向にあるが、短くしても運賃を据え置く「実質値上げ」が主流となっている。今回の東京都心部は2キロ未満なら値下げとなる仕組みで、全国でも異例の試みだ。全国の主要都市の初乗りは600円台が大半で、東京都心の初乗り410円は沖縄県の離島などを除けば全国最安値だ。
今回、国交省は2キロ以上の利用については調べていないため、730円以上の利用がどう変化したのかは分からない。東京都心のタクシーの平均乗車距離は4キロで、走行距離や速度によって値下げになる場合もあれば値上げになる場合もある。
東京都内のタクシー大手の間でも、「ちょい乗り」が増えたという声がある一方、「ちょい乗りはさほど増えず、中長距離の利用が減ったためか、売り上げが減った」という声もある。今回の運賃の見直しは、タクシー会社が「ちょい乗り」増加による減収分を長距離利用者による増収分で補うよう設計したが、売り上げが減るようであれば、競争が激しいタクシー業界にとっては死活問題だ。
運賃改定の効果は短期間で評価することは難しいため、国交省は3月以降に定期的に輸送実績を集計し、見直し効果を検証するという。果たして今回の運賃見直しは利用者にどう評価されるのか。今後の調査が注目される。