三菱重工と日立の泥仕合 壮絶な「責任の押し付け合い」

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   南アフリカの火力発電システム工事をめぐり、三菱重工業と日立製作所が火花を散らしている。三菱重工は2017年1月、事業のパートナーである日立に対し、工事で発生した損失として約7634億円を請求。16年3月に請求していた額から一気に倍増させた。日立は応じない構えで、事態は泥仕合の様相を呈している。

   「請求は正当な権利の行使」(三菱重工)。「法的根拠に欠けるため応じられない」(日立)。両社が2月8~9日、損失請求について公表した文書は、真っ向から対立する内容だった。

  • 泥仕合に発展
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南アフリカの火力発電所向けボイラー建設事業が発火点

   三菱重工と日立は2014年、火力発電システム事業を統合し、三菱重工が65%、日立が35%を出資して「三菱日立パワーシステムズ(MHPS)」を発足させた。新興国での受注拡大に向け、米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスなど世界大手と戦う体制をつくることが狙いだった。

   華々しく出発したMHPSだったが、ある問題を抱えていた。事業統合前に、日立が受注した南アフリカ共和国の火力発電所向けボイラー建設事業だ。総額5700億円で12基を建設する巨大プロジェクトだが、1基目の運転開始が当初予定していた2011年から4年もずれ込むなど、工事は大幅に遅れた。

   遅延に伴い多額の損失が発生することは、MHPSの発足前から見込まれていた。このため、事業統合で三菱重工が日立から火力発電システム事業を譲り受ける際、譲渡額は暫定的な金額とし、のちに損失を精査して差額を調整することにした。

   ところが、調整はすんなりとは進まなかった。両社は、統合前に原因のある損失は日立が負担し、統合後の事業についてはMHPSが責任を持つことで合意していたが、損失が統合の前と後のどちらに起因するのかをめぐり、壮絶な「押し付け合い」が始まったのだ。

事業統合した名門企業同士がいがみ合う異例の事態

   両社は協議内容の詳細を明らかにしていないが、三菱重工は「統合時点で既に見込まれていた損失であり、日立が支払うべきだ」と主張。一方の日立は、MHPSが進めているプロジェクトであり、日立だけが負担するのはおかしい――との立場のようだ。

   三菱重工は2016年3月、約3790億円を日立に請求。そして17年1月末には、「統合時点での収支見積もりなどを精緻化した結果」として、請求額をほぼ倍に引き上げた。両社とも「協議を継続する」としているが、主張は平行線のまま。事業統合した名門企業同士がいがみ合う異例の事態となっている。

   三菱重工は日立から支払いを受けることを前提に、請求額の一部を資産として財務諸表に計上している。もし、日立から支払いを受けられなければ、将来損失が生じることになる。一方、日立は支払いに備え、「合理的に見積もった額を引き当てている」と説明しているが、今回請求された7600億円もの金額をすべて引き当てているとは考えにくい。もし、引き当て分を上回る支払いをすることになれば、やはり将来損失が生じる。市場では「どう決着するのか見通せないが、両社とも財務悪化リスクを抱えている状況だ」(アナリスト)との声が出ている。

   MHPSは現在、工事の進捗管理を強化しているが、巨大プロジェクトでもあり、業界や市場では「今後も損失が増えるのではないか」との懸念もくすぶる。今回の問題は東芝の原発ほどではないが、海外の巨大プロジェクトのリスクを改めて見せつけたといえそうだ。

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