米ファッション誌「VOGUE」に白人モデルによる芸者風の写真が掲載されたことをめぐり、本国を中心に批判が相次いでいる。これを受け、モデルを務めたカーリー・クロスさん(24)は2017年2月15日、ツイッターに謝罪コメントを掲載した。
だが、当の日本人はこの謝罪について、いまいちピンときていない様子。一体何がこれほど問題になったのか。
カーリー・クロス「私のものではない文化を盗用」
物議を醸しているのは「VOGUE」2017年3月号に掲載された写真特集だ。米メディアの報道によると、タイトルは「Spirited Away(神隠し)」。いずれも日本国内で撮影されたもので、日本髪風のウィッグと着物をおもわせるドレスを身につけたカーリーさんが、寺社の手水舎や四股を踏む力士などと一緒に写っている。
一連の写真に対してツイッター等で批判が殺到すると、カーリーさんは15日、自身のツイッターに次のような謝罪コメントを掲載した。
「これらの写真は、私のものではない文化を盗用したものでした。文化的に敏感でない撮影に参加してしまい、本当に申し訳ありません。私の目標は、常に、女性たちに力を与えインスパイアすること。今後の撮影や企画では、この使命を必ず反映していきます」
ところが、日本でこの騒動が報じられると、ネットユーザーからは
「これの何が問題なんだろう」
「ただ綺麗やと思うけどなあ」
「文化の盗用?日本人としてこの写真に不快感はないけど」
「非難している方が差別意識が強い」
といった声が目立った。作品群は日本文化に忠実とは言えないものの、「日本」「芸者」のイメージをデフォルメしたようなアーティスティックなビジュアルに、むしろ好印象を持った人が少なくなかったようだ。
アメリカでここまで問題視された理由は何なのか――。騒動のキーワードは、カーリーさんも謝罪していた「文化の盗用(Cultural appropriation)」と、「ホワイトウォッシング(Whitewashing)」だ。
Cultural appropriationとWhitewashing
「Cultural appropriation」は、ある文化圏の人々が異なる文化を搾取的に利用すること。特に、マイノリティの文化が本来の意味や伝統を理解されないまま、娯楽的・商業的に使われる際に用いられる。「Whitewashing」は、白人以外の役柄を白人俳優が演じることを指し、多くは人種差別的な意味合いで使われる。
どちらも日本ではあまり馴染みのないものだが、多様な人種が暮らすアメリカ国内――特にハリウッドではたびたび物議を醸す問題だ。
今回の件では、日本文化を独自の解釈で扱ったこと、とりわけ欧米人の持つステレオタイプな日本のイメージ=芸者をデフォルメして扱ったことは「文化の盗用」であり、日本に縁のない白人モデルであるカーリーさんを起用したことは「ホワイトウォッシング」である...と受け取られたようだ。
実際、米国のネットユーザーからは
「『文化の盗用』はアジア人にも適用されるんだよ!うんざりする」
「なぜ白人モデルなの?世界で日本人モデルが不足してるの?」
と、日本とは異なる声がいくつも寄せられており、カーリーさんの謝罪もこうした批判に答えたもののようだ。
ちなみにVOGUE3月号のテーマは「多様性」。表紙を飾るのは肌の色や体型の異なる7人の女性モデルだった。米ファッションサイト「THE CUT」は、今回の騒動について次のように論評している。
「ヴォーグ3月号は『多様性』をテーマにしているが、そのコンセプトが実際に意味することを誤解しているようだ。1つ確かなのは、多様性を持つことは、カーリー・クロスを芸者にスタイリングすることではないということだ」(15日配信記事冒頭より)