「芸能人の労働環境を糺す会」発足 幸福系雑誌サイト「労働局へ請願」報道

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   女優でタレントの清水富美加さんが宗教団体、幸福の科学に「出家」したことをきっかけに、「芸能人の労働環境を糺す会」という団体が発足した。

   幸福の科学出版が発行する月刊誌「The Liberty」Web版が 2017年2月17日付で報じたもので、幸福の科学との関係が深いとみられる。同会は、芸能人の雇用契約の内容や労働環境の改善について、東京労働局に「芸能人の労働環境の是正を求める請願」を提出し、タレントを劣悪な労働条件で働かせる芸能プロダクションに対して、厳しい対処を求めた。J‐CASTニュースは会長の松井妙子弁護士に話を聞いた。

  • 芸能人は「労働者」なのか?(画像は、「芸能人の労働環境の是正を求める請願」写し)
    芸能人は「労働者」なのか?(画像は、「芸能人の労働環境の是正を求める請願」写し)
  • 芸能人は「労働者」なのか?(画像は、「芸能人の労働環境の是正を求める請願」写し)

劣悪な労働条件の芸能プロに厳しい対処を

   清水富美加さんの「出家」を機に芸能界の労働環境や契約内容の問題が注目されるなか、「芸能人の労働環境を糺す会」は2月16日午前、芸能人の労働環境の是正を求めて、東京労働局に請願書を提出。東京労働局に対して、

(1)芸能人のうち、労働基準法9条の「労働者」に該当する者には、労働基準法や民法の雇用契約の規定が適用されることや、芸能プロダクションは労働基準法の定める労働条件を守るべき義務があることを徹底周知すること。
(2)芸能プロダクションが労働基準法、独占禁止法、不正競争防止法等に違反して、芸能人に対して不当な要求をしないように監督を強化すること。
(3)劣悪な労働条件下にいる芸能人がわかった場合には、東京労働局による芸能プロダクションへの任意の立ち入り調査、さらには労働局、労働基準監督官による強制捜査も視野に入れて厳格に対処すること。

の3点の実行を求めている。

   個別の芸能人や芸能事務所には触れていないが、清水さんと所属事務所だったレプロエンタテインメントを意識しての行動とみられている。

幸福の科学とレプロが対立

   幸福の科学は、清水さんが「出家」したことを明らかにした際に、レプロエンタテインメントの契約内容について「奴隷契約」と表現するなど、強い調子で非難を続けている。たとえば、契約が1年ごとの契約にもかかわらず、本人が「辞めたい」といっても事務所側の同意がなければ強制的にもう1年働かなければならないことなど、事務所側に有利になっていると指摘していた。

   これに対して、レプロ側は「仕事量とか内容についてきちんと評価して、それに見合った適切な金額を支払ってきた。本人が望まない仕事について無理やりやらせることは断じてなかった」などと反論している。

   清水さんに限らず、タレントと芸能プロダクションとの雇用契約は一般的に、タレントを「個人事業主」に見立てて、「専属契約」を結ぶ。請負契約のような、タレントと事務所側がお互いに独立した対等な立場として契約を結んでいるケースが少なくない。

   そのため、本来であればタレントが自分自身で休日や仕事のやり方などを決められ、その半面、事務所側は労働基準法に定められた最低賃金や残業代を支払わなくて済む。

   ところが、労働実態は事務所側がタレントの意にそぐわない仕事を押しつけたり、深夜・早朝に仕事を入れたり、体調不良でも仕事を断ることを許さなかったりと、タレントの負担が大きくなることが指摘される。

弁護士「清水さんのような契約内容は特別ではない」

   「芸能人の労働環境を糺す会」の会長である松井妙子弁護士は2017年2月17日、J‐CASTニュースの取材に「清水さんと芸能プロダクションとの契約内容がどのようになっているかはわかりません」としたうえで、「大スターであれば、出演する仕事を選んだり、お給料を出来高払いでもらったりする契約がみられますが、テレビ出演などの仕事を事務所側が一方的な指揮命令のもとで提供し、その報酬を月給で受け取るという労働実態(使用従属性)であれば、タレントは労働基準法9条の『労働者』にあたりますから、事務所との関係は『雇用契約』になります。このことは過去の判例でも明らかです」と説明。なかでも、「仕事が少ない、若い人ほど月給制だと思います」と話し、清水さんのような契約内容が「特別」ではないとみている。

   松井弁護士は、タレントの中には、危険な仕事や水着撮影などのやりたくない仕事を無理やり引き受けされられるケースも少なくないといい、タレントによっては仕事を拒否したために「干される」場合もあり、職業選択の自由(憲法22条)や幸福追求権(憲法13条)などを侵害する「人権問題」にもなる、とも指摘する。

労働局「労働実態で判断します」

   請願を受けた東京労働局は、J‐CASTニュースの取材に、一般論としたうえで、「働いている人が『労働者』であるかないかを判断する場合、『使用従属性』が認められるかどうかになりますが、これは契約内容ではなく、労働実態で判断します」と話す。

   「契約内容はタレントによって違うでしょうから一概には言えませんが、たとえば駆けだしのタレントであれば、通常(一般的な会社と社員のような)の雇用関係と変わらないかもしれません」とみている。

   ただ、「糺す会」が求めている任意の立ち入り調査や強制捜査については、具体的な回答はなかった。

   一方、清水さんは2月17日、「千眼美子(せんげん・よしこ)」という出家後の名前で『全部、言っちゃうね。』を幸福の科学出版から出し、事務所での「待遇」などについて、自らの経験を綴り、意にそわなかった面が多々あることを告白。にわかに、芸能人と芸能事務所の関係に注目があつまる状況になっている。

   このため、今回の「糺す会」の動きについて、インターネットの掲示板などには、

「幸福の畳みかけ方がすごいな。次から次へと攻めてくるからレプロも硬直するしかないなw」
「幸福は一気にきたねw でもこれじゃあ芸能界を敵に回したようなもんだな」
「言ってることは至極まっとうだ」
「よかったな。これで芸能人の労働環境が改善される」
「芸能人には人権など無い!商品だからね」
「アイドルやモデルの卵を5万で住込み? 犯罪だろうが。こんなやり方をしているのはたぶん日本だけだろ」

といった声が寄せられている。

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