KADOKAWAの対応に編プロがブチ切れ 大量誤植本めぐり「礼儀に反する」

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   雑誌「岐阜信長歴史読本」に地名の誤りや漢字の変換ミスなど約30か所の誤表記があった問題で、同書の校正を委託された編集プロダクション「ぷれす」が、発売元のKADOKAWAの対応に怒りを露わにしている。

   「KADOKAWAの対応は、礼儀に反している」――。J-CASTニュースの取材に対し、こう語気荒く話したのは「ぷれす」の奥村侑生市(ゆういち)社長だ。いったい、両社の間には何があったのか。詳しい経緯を追った。

  • 大量の誤植が問題となった「岐阜信長歴史読本」(KADOKAWA)
    大量の誤植が問題となった「岐阜信長歴史読本」(KADOKAWA)
  • 大量の誤植が問題となった「岐阜信長歴史読本」(KADOKAWA)

大量誤植の原因は...

   騒動の発端となった「岐阜信長歴史読本」は、2017年1月30日に発行された。岐阜市が編集に協力していたが、出版された雑誌を読んだ市職員が多数の表記ミスを発見。具体的には、ハイグレードを「廃グレード」と誤記していたり、岐阜市の地名が「三重県内」にあるように表記されたりしていた。

   2月9日の朝日新聞(ウェブ版)の報道によれば、KADOKAWAの担当者は同日に岐阜市役所を訪れ、市教委の担当者らに謝罪。一連の騒動は各メディアで大きく報じられ、ネット上では雑誌の編集体制に対する批判が相次ぐ事態となっていた。

   そうした中、雑誌の校正をKADOKAWAから委託され、本の奥付にも社名が記載された「ぷれす」は9日、公式サイト上に、

「弊社校閲部が校正したゲラ刷りを確認したところ、問題の箇所には入朱(間違いの訂正指示)や鉛筆による指摘を入れ、当雑誌編集部に納品しておりました」

とした文章を掲載。翌10日には、KADOKAWA側に「弊社の信用を失いかねない事態を引き起こしたことに対する謝罪」などを求めたところ、担当者から電話でお詫びがあったとも発表した。

   だが、インターネット上では、こうした経緯を知らずに「ぷれす」の校正作業に問題があったと批判する声も出ていた。そのため、同社は12日に「誤解」や「根拠なき中傷」による風評被害を危惧しているとして、

「校正にあたったスタッフの名誉、そして同業他社の社会的信用のためにも、弊社の主張を何らかの形で報道していただきたく、切にお願い申し上げる」

とした文書を報道機関向けに公表していた。

「事実関係をはっきり説明して欲しい」

   その後、事態が大きく動いたのは2月15日。KADOKAWAが、一連の騒動に関する社内調査の結果をまとめた報告書を公表したのだ。

   報告書でKADOKAWA側は、誤植の原因は自社のチェック体制の不備にあったことを認めている。具体的には、(1)本来は2回行うはずの校正・校閲作業が1回しか行われていなかった、(2)編集部内で組織的なチェック体制が機能していなかった――といった点が問題だったとしている。

   また、「ぷれす」側が適切な校正作業を行っていたと主張していた点についても、具体的な社名は出していないが、

「(KADOKAWAが)提供した校正刷に、内容のチェックならびに修正箇所の指摘(朱字)を正確かつ的確に行い、弊社担当編集者に納品したことを確認しております」

と認めた。

   だが、「ぷれす」側は同日中に、この報告書に書かれた内容を訂正するように求める文章を公式サイト上に掲載した。

   その中では、報告書の中で社名が出ていなかった点などを問題視し、「とても大雑把な報告書であると判断せざるを得ません」と厳しく非難。その上で、KADOKAWAに対しては、報告書の「訂正を求める」意向を明らかにしていた。

   「ぷれす」の奥村社長は2月16日のJ-CASTニュースの取材に対し、

「あいまいな表現が多く、どこか逃げているような内容の報告書で、これでは何か隠しているのではないかと思ってしまう。弊社の名前をきちんと出して、事実関係をはっきり説明して欲しい。そうでなければ、社の信用と名誉の回復にならない」

と訴えた。

KADOKAWA「社名を公表する予定はない」

   なお、奥村氏によれば、「ぷれす」側は15日にKADOKAWAの担当者に連絡を取り、報告書の内容を訂正するよう求めたが、

「社内で協議した結果がこの報告書であり、社名を公表することはできない」

との返答を受けたという。こうした対応について、奥村氏は、

「向こうの不手際で、当社に対する誤解も広まっている。正直、礼儀に反した対応だと感じます」

と憤りを露わにしていた。

   奥村氏はほかにも、「ぷれす」側が渡された校正刷りの原稿と、実際に出版された雑誌の内容が「大きく違っていた」と指摘。その上で、

「出版スケジュール的に考えて、常識ではありえない事態です。校正刷りの原稿を渡した後に、いったい何が起きたのか、想像もつきません」

と話していた。

   J-CASTニュースが16日午後、KADOKAWAの広報担当者に取材すると、「ぷれす」側が社名の公表を要求している点については「現時点では、個別の会社の名前を公表する予定はありません」と説明した。

   そのほか、具体的に編集部内でどのような不手際があったのか、校正刷りの原稿と雑誌の内容が違っていたという「ぷれす」側の主張は本当か、などの質問に対しては、

「発表した報告書以外の情報は現時点では未確定ですので、コメントは差し控えさせていただきます」

との回答だった。

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