「蛸は宇宙人である 学説がネイチャー誌に」――。こんなタイトルの「偽ニュース」が「事実」としてまとめサイトを中心にネット上で拡散されている。
2015年に発表された論文が発端で、実際には、そうした内容ではなかったが、ロシアの通信社の日本語サイトの記事が出たことで、多くのまとめサイトに掲載され、あたかもニュースのように広がっている。
論文には「joke」の文字が
問題の記事は、17年2月14日にロシアの通信社「スプートニク」の日本語版サイトで配信された記事だ。
記事では、15年8月に英科学誌「ネイチャー」(web版)に掲載された、沖縄科学技術大学院大学と米シカゴ大学、カリフォルニア大学バークレー校の共同チームが調査した「タコのゲノム構造」の研究成果を紹介している。
記事のタイトルは「蛸は宇宙人である 学説がネイチャー誌に」となってはいるが、500字程度にまとめられた記事本文では、「蛸は宇宙人」に関する直接の言及はない。
原典である研究論文を読むと、
「It's the first sequenced genome from something like an alien」
((タコの遺伝子は)宇宙人のようなものから見つかった初のゲノム配列)
とは書かれている。しかし、その直後に、
「jokes neurobiologist Clifton」
と続き、論文の共著者であるシカゴ大学のクリフトン・ラグズデール准教授のジョークだ、と記述してある。
沖縄科学技術大学院大学のホームページに掲載された研究の説明を読んでみても、
「『タコは他の動物と、それが例え近縁種であっても全く異なっているように見えます(略)そういった意味では、私たちの論文はエイリアンのゲノムが初めて解読された研究について書かれたものだと言えるかもしれません』と、論文共著者であるシカゴ大学のクリフトン・ラグズデール准教授は述べています」
と書いてある。記事のタイトルはかなり誇張されたものと言える。
しかし、「スプートニク」の記事が配信されると、
「『タコは宇宙人である』 遺伝子学者らの研究により学説が発表!」
「【衝撃】『タコは宇宙人である』という研究結果 学術誌ネイチャーに掲載される」
などと複数のまとめサイトで取り上げられ、ツイッターなどを通して拡散されることとなった。
2年前にも全く同じ現象が
実は、今回のような騒動は、この論文がネイチャー紙に掲載された15年8月ごろにも起きていた。このときも、
「タコの全遺伝情報、ついに解読される!! 科学者が暴露『エイリアンかもしれない』」
「『タコが宇宙人だったかも!』←『やっぱりな』という反応が多数だった!w」
といったまとめが複数作成され、ネット上で話題となった。
まとめサイトは、見出しをもとにニュースを判断することも多いため、同じネタの「再流通」を繰り返す特徴があり、今回もその典型といえる。
なお、「タコは宇宙人」説は、15年12月に発売された、オカルトネタをまとめた著書「『新』怪奇現象41の真相」(彩図社)で、「NASAが撮影した未知の人工衛星」や「南米のサッカー場に現れた伝説の怪人」とともに紹介されている。