「友人が少ないと思われたくない」などとして、自らの結婚式に代理出席する人を業者に依頼するケースが増えている。その背景には、若者を巡る環境の変化があるようだ。
「SNSの影響があると思います。友人がたくさんいるように見栄を張って、フェイスブックなどで結婚式を紹介したいと依頼してくることが多くなっています。同じ考えで、誕生会や女子会などでも代理出席の依頼が増えていますね」
出席依頼が20件から7年後に500件に増える
こう語るのは、様々な代行サービスをしている「ファミリーロマンス」の代表だ。J-CASTニュースの2017年2月15日の取材に答えた。
それによると、結婚式代理出席の依頼は、09年の創業当時は20件ほどだったのが、16年には、500件弱にも増えた。女性の方が気にする人が多いのか、6割を占める。代理の人数は、平均で6人ほどだが、中には十数人依頼する人もいるという。1人1万円からなので、十数万円以上もかけることになる。
「団塊の世代は、家族一緒で食事することも多かったと思いますが、今の若者たちは、両親が共働きだったり、中には離婚してしまったりして、コミュニケーションの機会が少なくなっています。また、一人っ子が増えたこともあって、人付き合いが苦手なことも多く、メールやラインで連絡を取り合うだけで親しい友人がいないということも多いようですね」
それでも、SNS上では、友人がたくさんいるように振る舞いたいわけだ。「両親の前では、いい子でいたいと、友人がいないことで悲しませたくないという思いもあるようです」と言う。
もっとも、友人が病欠したときの代行スピーチや新郎・新婦間で招待者数のバランスが合わないといった依頼理由も多いそうだ。
ほかの代行サービスでも、事情は同じらしい。「アクティング・エージェント・サービス」では、05年の創業当時は、結婚式代理出席の依頼は50件ほどだったが、16年は500~600件にも増えた。
スタッフ募集に対し、応募倍率が約50倍になることも
アクティング・エージェント・サービスの担当者は、友人がいない若者も多い背景には、一人っ子が増えたり、携帯電話が普及したりしたことなどもあるとしたうえで、次のように話した。
「友人関係が面倒臭いという人も多いようですが、友人が少ないとは思われたくないという心理があると思います。SNS上で写真を載せて、『いいね』をもらいたいといった動機も聞いています。結婚式のほか、クリスマスやハロウィンなどのパーティーにも、友人役を呼ぶことが多くなっていますね。会社関係者役を依頼されることも多いですが、いないと結婚相手の両親が不安になるのではと考えるようです」
結婚式代理出席の仕事については、各代行サービスとも希望者は多いという。報酬をもらえたうえで、食事付きでお土産ももらえるとあって、「おいしい仕事」と思われているらしい。
ファミリーロマンスでは、スタッフを常時募集していて、月に100人ぐらいも応募や問い合わせが来るそうだ。また、アクティング・エージェント・サービスでも、スタッフ募集に対し、応募倍率が50倍ほどになることもあるという。両社とも、結婚式代理出席1回で6000円前後の報酬が支払われる。
ただ、必ずしも「おいしい」部分だけではないらしい。「短い時間で稼ぎは多くなく、事前の予習も大切になります。仕事ですから、緊張感を持ってやらなければなりません」(アクティング・エージェント・サービス)とのことだ。