東芝は2017年2月14日、同日正午に予定していた16年4~12月期連結決算の発表を1か月後の3月14日まで遅らせると発表した。原発関連子会社が行った原発建設会社の買収をめぐり、17年に入ってから新たな内部通報があり、精査に時間がかかることが原因だ。「決算」の発表は見送られたが、監査法人の承認を得ない通期ベースの「決算見通し」を発表。1450億円の黒字だった従来予想を一転、3900億円の赤字の見通しになった。これに加えて、米原子力事業の「のれん代」として7125億円を減損処理することも発表された。
一連のトラブルの責任を取る形で志賀重範会長が2月15日付で辞任することも発表され、不正会計問題からの経営再建に取り組む同社は混乱を増している。
発表予定時刻から16分経って日経が「発表時間『未確定』に」
東芝は16年12月、米原発子会社「ウェスチングハウス(WH)」が15年に買収した原発建設会社「CB&I ストーン&ウェブスター社」をめぐり、数千億円規模の損失が発生すると発表していた。それだけに正午発表の決算内容が注目されていたが、正午に決算がされることなく、日経新聞が「発表時間『未確定』に」と速報メールを流したのが12時16分。東芝は14時30分になって適時開示情報閲覧サービス(TDNet)で決算発表延期を発表するというバタバタぶりだった。
15年3月期決算でも発表延期の「前科」
東芝の発表によると、1月8日と1月19日に「買収に伴う取得価格配分手続きの過程において内部統制の不備を指摘する内部通報」があった。1月28日には、WH社が起用した法律顧問の「K&Lゲーツ社」対して、WH社の「経営者による不適切なプレッシャーの存在を懸念する指摘」がWH社の経営幹部から寄せられ、1月下旬から2月7日にかけて、外部弁護士らがWH社の経営幹部に聞き取り調査を行った。
こういた経緯を受け、「更なる調査が必要との結論」に、2月13日午後に至ったという。
東芝は不正会計の影響で15年3月期決算の発表を2か月延期し、それでも監査が間に合わず、さらに1週間延ばしたことがある。
綱川智社長は2月14日18時半から本社で記者会見し、
「第3四半期報告書の提出期限を延長せざるを得ない事象が発生したことに伴い、予定しておりました決算発表についても延期させていただきます。皆様には多大なるご迷惑をおかけすること、心よりおわび申し上げます」
と述べ、謝罪した。
綱川社長は2月から月額基本報酬の返上率を従来の6割から9割に引き上げる。それ以外にも、原子力事業部長の畠沢守・執行役常務は3割から6割に、副社長は5割(従来4割)、その他の執行役は4割(従来3割)に引き上げた。
会長を辞任する志賀氏は、原子力部門を統括しており、WH社の社長を務めていたこともある。